■セノハチという峠で頑張った鼻筋の通った美形、EF59
関西より東で生活してきた人にはなじみが薄いかもしれませんが、今のJR西日本山陽本線の、瀬野駅から八本松駅間(共に広島県です)に通称「セノハチ」と呼ばれる、22.6パーミルというきつめの勾配が連続する峠があります。ここでは昔から通過する車両(主に貨物)に補機(補助機関車)が使われてきました。
EF59はその急勾配地、セノハチ専用の補機で1964年(昭和39年)に登場しました。元々はEF53とEF56で、工場で専用に改造されたモデルです。
下関方面は上の写真のように黄色と黒の警戒色が運転台窓下に塗られました。ちょっと近代的ですが、これもアメリカの鉄道っぽい感じがして悪くない感じです。
碓氷峠鉄道文化むらに展示されているのは、EF59 1です。元車となったEF53 8は1932年(昭和7年)12月の製造で、EF59への改造は1963年(昭和37年)12月のこと。廃車になったのが1987年(昭和62年)3月なので、なんと55年間も活躍しました。22歳で就職して77歳まで働いたって考えると、すごくないですか?
ちなみに改造前のEF53も展示されています。このEF53 2はEF59 11から復元したものだそうです。
EF59の東京方面には、連結を自動で解除できる装置が付けられているんです。昔は走りながら補機が外れて「時短」してたんだそうです。ユニークですね。
EF53から改造されたEF59のうち、初期にあたる1~19番台の車両をご説明しましょう。
これらのモデルはMT17というモーターを6機搭載し、最大出力は1350kwです。1350kwとは正直そんなに大きな数字ではなく、今の電気機関車の半分から1/3くらいでしょう。古いからしょうがないですね。
軸配置は2C+C2です。先輪が2軸なんで、そのためデッキは長く広く、四畳半くらいあるかな? といった感じです。全長も19.9mと長いです。長いデッキのため顔つきは鼻筋がシュッと通った男前といったイメージでしょうか?
室内は当然、木がタップリ使われており、機器もレトロそのものです。ここにレザーのソファなど置いたら、今人気の「ブルックリンスタイル」のインテリアといっても過言ではないと思いました。
SLは石炭を焚くため、室内はちょっとダスティです。その点、電気機関車はクリーンな環境。ほどよい錆びと枯れた雰囲気でいて清潔感があるのがいいんです。