以前、「認知症の予防に数独が効果的」と話題になったが、脳トレとしても、純粋な娯楽としても面白いということで、これからは「立体パズル」がブームになるかもしれない。
「パズルの中でもとくに立体パズルが脳によい」と唱えているのが、東京大学の池谷裕二教授。池谷教授が、立体パズルならではの効果として挙げるのが、「メンタルローテーション」(心的回転)能力の向上。これは、もともと頭の中でイメージした物体を回転させる能力を指すが、スポーツの世界ではサッカーのパスやゴルフのラインを読むための基礎能力として知られる。池谷教授によると、小説や新聞の内容を様々な視点から立体的に考察する能力にも関係し、メンタルローテーションが巧みであれば、カラオケの歌唱力から外科手術の執刀スキルに至るまで、様々な技量に影響するのだという。
これまで日本では、立体パズルといっても、ルービックキューブ系統の定番商品や、子供向けの知育玩具が主で、使用対象層が限定されていた。しかし、今年の2月に『立体パズルと思考ゲーム パズルコレクション』(アシェット・コレクションズ・ジャパン)が創刊され、立体パズルの裾野が広がりつつある。
本誌は、隔週発行の、立体パズルとマガジンがセットになった冊子で、全国の書店で発売されている。毎号付いている木製の立体パズルは、年齢層を問わず楽しめるものとなっているが、日常的にメンタルローテーション能力を使う機会の少ない人には、難易度は高め。それだけに、挑戦しがいのあるものとなっている。
立体パズルで必要とされ、かつ養われる能力は、メンタルローテーションだけでなく、論理力、予測力、記憶力、手先の器用さなど、パズルの種類によって異なる。例えば「ボールリングパズル」(第3号付録)は、左右の楕円リングの中にある32個のボールを、中央にあるスライドを使いながら左右に動かして、最終的に各リング内のボールを同色に揃えるというもの。
ただボールを適当に動かしているだけでは、永遠に解けない。そこで、スライドにどのボールを移動させ、反対側に動かしたときにボールがどこへ行くかを考える必要が出てくる。ここで使われる能力は、現状を把握する「観察力」、筋道を立ててボールを移動させる「論理力」、ボールを移動させたときの位置関係を推し量る「予測力」であり、パズルに取り組んでいるうちに養われる能力でもある。