近年の遺伝学や病理学の飛躍的な進歩により、日本人と欧米人とでは、以前考えられていたよりも、体質に違いがあることが分かってきている。そのため、「欧米の研究結果で健康に好ましい」とされた食品や健康法が、日本人には必ずしも当てはらない…どころか、逆に害をなす可能性もあるという。
日本人と欧米人の体質の相違にスポットライトをあて、欧米のリサーチデータを鵜呑みにすることの危うさに警鐘を鳴らすのが、奥田昌子医師。奥田医師が著した『欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」』(講談社)には、そういった例が網羅されており、ページをめくるたびに、目からうろこが落ちる情報が詰まっている。その中からいくつかを紹介してみたい。
●「心臓病予防にオリーブオイル」は日本人には逆効果
オリーブオイルに含まれるオレイン酸が、心臓病の発生を抑える効果があるということで、欧米では地中海食がもてはやされている。しかし、日本人はもともと心臓病の罹患率が低く、オリーブオイルを摂ることによる予防効果よりも、内臓脂肪がつきすぎて(オリーブオイルはれっきとした脂肪)、動脈硬化になるリスクの方が高い。
●赤ワインの健康効果を期待しても害の方が多し
赤ワインに含まれるポリフェノールが、悪玉コレステロールの酸化を抑止し、動脈硬化を防ぐということで、日本でも赤ワイン好きが増えた。しかし、奥田医師によれば、赤ワインは益よりも害が大きいという。というのも、日本人の約半数は、体内でアルコールを分解する能力が欧米人よりも低いため、がんを引き起こすリスクが高い。これはアルコール分解にかかわりのある遺伝子に生まれつき変異があるためで、この変異があると(変異のない人に比べ)アルコール分解能力が1/16に落ちる。対して欧米白人にはこの変異が認められないという。いずれにせよポリフェノールは、ブルーベリー、イチゴ、緑黄色野菜、大豆、ナッツ、魚などいろいろな食品に含まれており、赤ワインにこだわらなくとも十分摂取できる。