■商品として魅力的か? ★★★★★(★5つが最高点)
機械としては改良が望まれる点がいくつかあるが、それらを差し引いても『C3』は魅力にあふれている。まず、7色用意されたボディーカラーが『C3』のカタチによく似合っている。黒を除けばいずれもはっきりとした明るい色なのもコンパクトカーらしくていい。淡い紫というか藤色の「サーブル」や薄緑色の「アーモンドグリーン」などの中間色も個性的で好ましい。
コンパクトなクルマなのだから、大きなクルマと同じようなモノトーンやメタリックの強過ぎる色で気取ったって始まらない。小さなクルマは元気良く、ハッキリした色だと、見ているこっちも清々しくなってくる。小さなクルマほどボディカラーの果たす役割は大きくなってくるから、色は大切だ。担当者のセンスがモノを言う。
軽度の接触からボディを傷から守るという、ドア下部のエアバンプも面白いアイデアだし、デザイン的なアクセントにもなっている。コンパクトカーはリソースが限られているので、漫然と何も考えずに造っていたら、変わり映えのしないクルマしか生まれてこない。
「でも、何か工夫することによって魅力をアピールできるのではないか? 何か新しいことをしないとダメだ! カネは掛けられないけど、アタマを使え! 考えろ!考えろ!」
おそらく、『C3』の開発陣にはそうした意識を強く抱いてこのクルマをまとめ上げていったのではないだろうか? その意識は車内にも強く及んでいる。エアバンプを反復させたような凹凸を施したデザインのドアパネルや赤いアクセントなどは珍しくないけれども、ドアハンドルをクラシックなスーツケースのそれに見立てて仕上げたアイデアには舌を巻いてしまった。
唐突な感じがしないでもないが、「旅をモチーフとしています。ドライバーを心踊るツーリングへと誘うでしょう」と畳み掛けられてしまっては、こちらもソノ気になってしまう。『C3』は「人と荷物を載せて、走って、曲がって、止まる」という、これまでクルマに求められて来た機械的な価値以上のものを提供しようとしている。