
冬の急激に冷え込む夜に気を付けたいのが、温度差によって起きる肉体的ショック症状。よく、入浴時に冷えた身体のまま熱いお風呂に浸かるときに、心筋梗塞や不整脈、脳梗塞などが起きるといわれる。それは決して他人ごとではない。そこで今回は、お風呂の専門医にこの「ヒートショック」について、及び冬の健康的な入浴法を聞いた。
■冬の入浴時の事故死の原因「ヒートショック」とは
家庭の浴槽における溺死者数がこの約10年間で増えているという。厚生労働省の人口動態統計によると、平成16年の2,870人と比べ、平成27年には4,804人と、約1.7倍に増加したという。平成27年の家庭の浴槽における溺死者のうち、92%が65歳以上の高齢者であった。
さらにこうした溺死を含む入浴中の事故死は、12月、1月、2月の冬の時期に多いことも分かっている。消費者庁は、冬に多発する高齢者の入浴中の事故に対して注意喚起をしている。それは、「入浴前に脱衣所や浴室を暖める」「湯温は41度以下」「浴槽から急に立ち上がらない」など。どうやら温度に関係しているようだが、いったい何が問題なのだろうか。
東京都市大学人間科学部教授・医師の早坂信哉先生は次のように話す。
「入浴前の脱衣所が冷えている中で服を脱ぎ、冷えた身体のままで急に熱い湯に浸かるなどすると、その急激な温度差によって、肉体的ショック症状が起きることがあります。これを『ヒートショック』と呼びます。ヒートショックにより、心筋梗塞、不整脈、脳梗塞、脳梗塞が起きて突然死してしまうケースが後を絶ちません」
■ヒートショックはなぜ危険なのか
ヒートショックは、なぜ心筋梗塞や脳梗塞などの重大な疾患につながってしまうのだろうか。早坂先生は次のように話す。
「ヒートショックは、血圧の上下の変動が激しいときに生じます。例えば、暖房の効いた温かい部屋から急に冷えた脱衣所や浴室で裸になると、寒さで血管が収縮し、血圧が上がります。そしてお風呂の熱い湯に浸かると、身体が温まり、今度は血管が拡張して血圧が下がります。また、湯船から出ようとして急に立ちあがると血圧はさらに下がりますが、お湯から出ると今度は急激に上がるのです。こうした血圧の激しい変動によって心臓や脳などに異常を起こす可能性があるのです」