今、自分の勤める会社の「福利厚生」についてどのくらい利用し、どのくらい知っているだろうか。近年は、いわゆる法定外福利厚生と呼ばれる、育児休暇などの各種手当やライフサポートなどの福利厚生が充実してきている。このような中、福利厚生について「利用率が低い」「社員が申請しにくい」などの課題もあるともいわれる。そこで自社の福利厚生や就転職先の福利厚生との付き合い方について、福利厚生管理士に聞いた。
■福利厚生の利用率
福利厚生は、果たして一般的にどのくらい利用されているのだろうか。福利厚生型家事シェアサービス「ショコラ」が2016年11月に行った意識調査によると、福利厚生の認知・利用状況にについて、自社の福利厚生を「知っていて、利用している」人は42%、「知ってはいるが、利用していない」人は32%いた。一方、「これといった福利厚生が無い」は17%、「よく知らない」は9%だった。
この結果をみると、福利厚生を利用しているのは約4割ほどで、それほど利用されていないように見える。一般的にも、福利厚生の利用率が上がらないという課題はよく人事担当者の悩みとしていわれることだ。しかし、株式会社ベネフィット・ワンの福利厚生管理士である佐々木駿氏は、利用率の低さは問題ではないという。
「このアンケート結果から、『福利厚生の利用率が上がらない』と私は考えてはいません。なぜなら、福利厚生は全員が利用する権利を持ちますが、利用するタイミングは人によって異なるからです。例えば育児に関する制度があったとして、果たして全員利用している、 という回答になるでしょうか。ならないはずです。重要なのは自社の福利厚生がどんなものか知っているか、理解しているかです。そのうえで利用するタイミングはまちまちでもよいと考えます」
佐々木氏によると、このアンケート結果には、別の問題があるという。
「問題は、福利厚生を知らない9%の存在です。給与は知っているはずなのに、『非金銭報酬』とも言い換えられる福利厚生を知らないのはもったいないです。会社側の案内が足りないことが考えられます。周知の方法としては、『イントラネット(社内ネットワーク)などでの紹介』『利用者の声を社内報やイントラネットなどに掲載』など、さまざまな方法があります」
■福利厚生の申請が面倒・手続き方法が分かりにくい課題
従業員にとって、福利厚生を利用しない理由は一つではない。例えば、利用するベネフィットを感じない、福利厚生は申請が面倒、手続き方法が分かりにくいなどがあるといわれる。佐々木氏は特にこの面倒さ・分かりにくさの問題の解決策について次のように話す。
「これは人事・総務などの福利厚生を担当者によるところが大きいです。進んだ企業では毎月メールやWEBなどを活用して告知をしたり、朝礼で制度について話したりして従業員に情報を届ける努力をしています。面倒な場合や質問がある場合、都度、意見を上げることが重要と思われます。
多くの人事担当者は、『従業員から声が挙がった』ということを理由に制度拡充などの検討を始めます。福利厚生は待遇の一つです、遠慮せずどんどん意見を発信しましょう」