■アナログプリント「最後の領土」
「2000年頃を境に、業界団体がデジタル化の方向へ一気に舵を切りました。アナログのプリントプロセッサーも、そのあたりで新製品が出なくなりました。現在、アナログプリントができる店は日本国内に5軒あるそうですが、アナログ一本槍でやっているのはそのうちの2軒だけ。ウチはその2軒のうちの1軒です」
先述のように、坂野氏の店には世界中からプロカメラマンがやって来る。もはやアナログプロセッサー自体が、日本以外の国では失われているからだ。
「中国人のカメラマンもよく訪れます。中国という国は進化に対して敏感な分、既存のものに対しては非常にドライですから。もはやアナログプリントの機器は失われてるそうです」
中国に限らず、他の国でも状況は似たようなものだ。このプロセッサーは日本製で、しかも交換部品の量産はすでに打ち切られている。部品の在庫があるか否かをメーカーに問い合わせ、場合によっては部品の特注について担当者と協議する。こうしたことは、日本に所在を置かなければできないことだ。
日本はアナログプリントにとっての「最後の領土」と言ってもいい。