■イチオシの高額ハイスペックスマホはどれ?
房野氏:この冬の2:1ディスプレイモデルの中で、どの端末の評価が一番高いでしょうか? 値段も含めて、どう思われますか。
石川氏:値段、デザイン、意外性も含めていうと、ファーウェイは面白いという気はしますね。
石野氏:こう見るとiPhone XとNote8は、まだ造形が甘いよう気がするな。Note8もカメラ部分が主張し過ぎています。試作品かって感じ。
法林氏:「AQUOS R compact」のカメラのモジュールの話、聞いた? ディスプレイが切り欠きじゃないですか。普通のカメラモジュールは四角い筒状に作られているので、それだと切り欠きの部分が、さらに大きくなっちゃって、黒い部分ができちゃう。それがうまく収まるように、カメラモジュールの基板は四角いんだけど、その上に載せる筒を円筒形にしたカメラモジュールを作って、ディスプレイの上部に入れたそうです。
房野氏:素晴らしい。
法林氏:これはやっぱり、カメラモジュールを自分のところで作っているからできることですね。端末とカメラモジュールと液晶デバイスを持っているからできる。
房野氏:Appleについても、OSを持っているから強いという話がありましたね。
石川氏:単にものを作れますってだけじゃ、もう駄目。そうなると、ASUSとかは厳しいというか、パソコンにしても、いろんな部材を集めて組み立てるだけなので、限界は来るだろうなっていう気はする。
石野氏:確かにASUSはモジュール的なものを何も持ってないんですよね。
石川氏:HTCが駄目になったのも、それでしょう。
石野氏:あと、ファーウェイでいえばCPUの設計ですよね。
石川氏:だから、ファーウェイも強い。
法林氏:ファーウェイの「Kirin」(ファーウェイ傘下の半導体メーカー、HiSilicon Technology社が製造するチップセット)なんかもそうだしね。
石野氏:CPUはでかいですね。
法林氏:カメラも、センサーはソニーが作っているけど、モジュールをどうやって作るのかは、モジュールメーカーさん次第。これは結構、いろんな会社が出している。ソニーはソニーで自分の強みを出しているし、シャープみたいに自分の強みを出してデザインしているところもある。
房野氏:ものづくりに回帰してきているところがあるんですね。ちなみに、石川さんはMate 10 Proがイチオシしということでしたが、お二人はどれを推しますか? 私は指紋認証の素晴らしさでMate 10 Proを推したい気がしているんですが。
石野氏:Note 8の指紋センサーは、やっぱりちょっと遠過ぎるんですよね。速さ自体は、そんなに変わらないような気がする。場所ですよ。ちゃんと指が当たるんです。
法林氏:Galaxy S8でもそうなんだけど、若干、探す感がある。Mate 10 Proは、ここにあるのが、すぐわかる。
房野氏:それらを踏まえて、何をイチオシにしますか?
石野氏:難しいですけど、僕はNote8。iPhone Xはチャレンジを買いたい一方で、やっぱり指紋センサーがなくなったのと、まだ未完成な部分があるというか。
法林氏:Appleの問題といえばそうだけど、対応していないアプリがまだちょいちょいあるね。これは結構、困る。
石野氏:やっとGoogleマップが対応したくらい。チャレンジングな1台だけど、完成版ではない。10年かけて完成させていくものなので。
石川氏:そう、10年後ですから。
石野氏:『iPhone 20』くらいで完成するんですよ(笑)
房野氏:法林さんはいかがですか?
法林氏:僕はどうかな……甲乙つけがたい出来。カメラは好みが分かれるかな。Note8はGalaxy S8のときからそうだったけど、バランスが良くて出来がいい。ただ、ファーウェイは、P10から少し処理が変わったみたいで、暗いところに強くなった。
石野氏:今回、レンズの開放F値が1.6とかいっていましたね。
法林氏:レンズは一段、明るい。
石野氏:2つのカメラ両方で光を取り込んで明るくする、というようなことをいっていた。良くなっていると思います。ただ、仕上がりをトータルで見ていくと、パッと見できれいだと思うのはNote8とiPhone X。
石川氏:iPhone Xは動画がすごくいいなと思う。
石野氏:ただ、デジタルズームしたときを比べると、Note8の方がいい。シチュエーションによって違う。
房野氏:iPhone Xの背面カメラが縦並びになった弊害はないですか?
石野氏:違いは感じられないです。
石川氏:話を聞いたら、やっぱりフロントにセンサーを置くために、入れられなかったということでしたね。
石野氏:石川さんはAR説を唱えていましたけど。
石川氏:全然違った。
法林氏:まあ、甲乙つけがたいと思う。Mate 10 ProとNote8は、この冬買うモデルとしてお勧めです。
石野氏:さすが、シェア1位、2位、3位ですね。
法林氏:iPhone Xは難しいですよ。未完成要素が少しあるので。ただ、そういう意味でAppleとしては珍しい、野心作だと思います。
石川氏:ホームボタンをなくしたけど、使っていて、そこは全然関係ないというか。逆にスムースに使えるところも多い。
法林氏:他の機種を使ったときに上フリックが多発する。
石野氏:くせになる操作ですね。
法林氏:逆に、カメラはもうちょっと頑張れないかなとも思った。
石川氏:ズームが弱い。期待通りに撮れない。
石野氏:ただ、食事を撮ったときは、Note8は食事モードにしないとアレですけど。
石川氏:Note8は食事の撮影がいまひとつだよね。
石野氏:食事モードにしないとダメなんですよ。
石川氏:そこにAIを使わないと。
石野氏:色々検証した結果、Note8の食事モードと、iPhone Xの普通に撮った写真が同じような色味になる。iPhone Xは今回、色をこってり乗っけてきています。
法林氏:あと、ディスプレイが今回、ちょっと違うからね。iPhone Xはカメラアプリのフィルター機能が結構、有効です。これを変えながら食事を撮ると、おいしそうなご飯から不味そうなご飯までいろんなご飯が撮れます。
……続く!
次回は、格安スマホ人気の失速について話合います。ご期待ください。
法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。
石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。
石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。
房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。