■歯切れ良くヌケのいい『E2000』、低域の重心が下がる『E3000』
ハウジングの素材が違うとは言えどちらも金属の削り出しでドライバーは同じなので、そんなに音に違いはないだろうと思っていたが、これが驚いた事にかなり違う。Yuji Ohno & Lupintic Five with Friends「BUONO!! BUONO!!/THEME FROM LUPIN III 2015〜ITALIAN BLUE ver」(48kHz/24bit)を聴くと『E2000』では、全ての楽器の音像定位がクッキリして、刻んでいるリズムもハッキリして、曖昧さのない音である。『E3000』にするとウッドベースの支配力が高まり中低音に厚みが増してピラミッドバランスの落ち着いた音になる。アコースティックな楽器の音色が耳に優しい。
森恵「Re:Make1、Grace of the Guitar、COVERS Grace of The Guitar+/飾りじゃないのよ涙は」(48kHz/24bit)を聴くと『E2000』のボーカルは高域のヌケがよく、ギターは高域の響きが強調されてピッキングが目立ってくる。粒立ちのいい音で、キラキラとした輝きがあり抑揚が強くなる。『E3000』では、高域の弦が柔らかくなり、ボーカルはなめらかで息づかいがよく分かる。
MichaelJackson「Thriller/Billie Jean」(DSD64)は『E2000』のハイスピードでキレのある音にはまって気持ちよく聴ける。『E3000』は低域の下が伸びてワイドレンジ感がある。重心が下がって中低域に対して、高域はやや穏やかでアンバランスに思える。
両者を比較してみると『E2000』はハイレゾ向き、打ち込み向き、粒立ちのいい音が好きな人向き。『E3000』は楽器の音色重視、なめらかさ重視、中低域に厚みありで、クラシック向き、60〜90年代のロック、そしてジャズ向きと言える。それなら、女性ボーカルはどちらがいいかと言えば、これが難しい。高域の透明感やヌケの良さは『E2000』、ボーカルのなめらかさ、厚みのある感じは『E3000』の方が良かった。つまり曲によって違うとしか言いようがない。音場感に関してはスタジオで作り込まれたものに関しては『E2000』が得意、ライブ会場やコンサートホールの雰囲気は『E3000』が得意だ。最大公約数的に考えれば『E2000』になるだろうが、長時間聴くなら『E3000』の方が疲れない。はからずしも『E2000』が好きか『E3000』が好きかで、あなたの音の傾向がズバリ分かってしまうのだ。どちらを選ぶにしてもfinal『E2000/E3000』はU6000円のイヤホンの中では、ずば抜けて高音質でハイコスパであることは間違いない。
写真・文/ゴン川野
オーディオ生活40年、SONY『スカイセンサー5500』で音に目覚め、長岡式スピーカーの自作に励む。高校時代に150Lのバスレフスピーカーを自作。その後、「FMレコパル」と「サウンドレコパル」で執筆後、本誌ライターに。バブル期の収入は全てオーディオに注ぎ込んだ。PC Audio Labもよろしく!
※記事内のデータ等については取材時のものです。