■意外と知らない旅館マナー
旅館に泊まり慣れているという場合も、意外と破っているマナーもあるかもしれない。川道さんに意外と知られていない旅館マナーとして次のことがあるという。
●旅館への到着時間が大幅に前後するときは必ず事前に連絡を
「旅館では、お客さんの到着時間に合わせて、お迎えのスタンバイや夕食の準備をしています。旅館へ到着する時間が予定よりも早い場合は、お部屋の準備ができているかどうかの確認も含め、事前に連絡をしましょう。もちろん、到着時間が遅くなる場合も同様です。また、やむを得ない場合を除き、夜中のチェックインは迷惑がかかるので避けましょう」
●荷物を置く場所は仲居さんに確認する
「お部屋に案内された際、意外と迷うのが荷物の置き場所。床の間は花や掛け軸などが飾ってあり、お客様に対してのおもてなしの心を示している場所なので、荷物を置いてはいけません。出入口付近に置くのも邪魔になるので控えましょう。お部屋に案内されたときに、旅館のことをよく知る仲居さんに教えてもらうのが一番良い方法です。
また、荷物を運ぶとき、特にキャスター付きのトランクは要注意です。畳の上を引いて移動させると、畳が汚れ、傷ついてしまうので絶対にしないようにしましょう」
●朝起きたら、布団はそのままでOK
「朝起きたとき、ついつい畳んでしまいたくなる布団。しかし、旅館ではシーツや布団カバー、枕カバーなど毎日新しいものを使うため、布団を畳んでいるとかえって取り替えに手間がかかってしまう場合があります。その上、朝起きてすぐに布団を畳むと、汗で湿っていることもあるのでダニの繁殖の原因になることも。少しでもお手伝いをしたいという気持ちは嬉しいと思いますが、旅館にはそれぞれのやり方があるので、おまかせすることも臨機応変なマナーといえます」
●湿っているタオルは、タオル掛けや洗面台へ
「使用したタオルが湿っている場合は、タオル掛けや濡れてもいい洗面台などに置いておきます。畳の上や座椅子にかけているのをよく目にしますが、カビや傷みの原因になりますので注意しましょう」
最後に、川道さんに旅館をはじめとした旅行全般のマナーについて、アドバイスをもらった。
「そもそも、マナーは絶対にこうしなければいけないというものではありません。マナーとは、相手を思いやる心、気持ちを言葉や動作などの形で表現して伝えることです。ですから、相手や状況に応じて臨機応変に形を変えてかまわないのです。
旅行先で出逢う人たちが、お互いが相手の立場に立ち、相手を思いやる気持ちを持つと、『ウイン・ウイン』、『ハッピー・ハッピー』の関係を築くことができ、思い出に残る快適な旅行になるでしょう」
取材協力
真心マナー講師・マナーコンサルタント 川道映里さん
銀行に就職後、結婚を機に退職し四国地方を中心にマナー講師として活動。その後、マナー界のカリスマ・マナーコンサルタント西出ひろ子氏の提唱する真のマナー論に感銘を受け、西出ひろ子氏に師事。同氏のもと、四国初のマナーコンサルタントの資格を習得。徳島を拠点に全国の企業や自治体、学校などでマナー研修・コンサルティングを行う。ドラマのマナー指導やメディアでも活躍中。ウイズ株式会社副社長兼四国エリア長、ファストマナースクール所属。
取材・文/石原亜香利