■連載/元DIME編集長の「旅は道連れ」日記
定年を数日後に控えた10月8日、現役最後の釣りに出かけた。ターゲットはヒラメ、港は千葉県九十九里の片貝だ。港集合時刻は、早朝4時半。片貝は僕の住む新宿区から車で約70分と近いので、家を深夜2時半に出れば十分に間に合う。とはいえ、そのためには2時には起きなければならない。釣りをやらない人にとっては、とてつもない早起きということになることだろう。
僕は月に2回ほど釣りに行くが、ほとんどが練馬区に住む釣友・正林さん(来年4月に定年)との釣行で、正林さんが車で迎えに来てくれる。8日は3連休の真ん中だったので深夜出発とはせず、前日7日の午後3時半に迎えに来てもらい、港近くの民宿に素泊まり(宿泊費3000円)することにした。今回はもう1人の釣友、武蔵野市の岡野さん(定年→再雇用)も参加だ。
岡野さんはまず正林さん宅に行き、車を正林さんの駐車場に置く。1台3人乗車で釣りに行くわけだ。釣りにかかる費用は乗船料の1万円~1万2千円に、高速代+ガソリン代が加わる。この交通費が意外にかかり、定年組の財布に響くが、3分割となれば負担はかなり和らぐ。正林さんの車はスペースたっぷりの5人乗りワゴンながら、釣行での乗車は3名が限界だ。釣り道具を入れるバッグやクーラー、着替えがけっこうかさばるからだ。ゆえに僕はクーラーを持参しない。釣った魚は正林さんのクーラーに入れて、我が家に送ってもらった際に取り出すとことにしている。
この日は夕刻片貝に着き、飲みながら釣り談義に興じ、9時には就寝。翌朝は3時半に起きればいいので、睡眠時間は十分だ。この夜の釣り談義で、なるほどという釣り技を正林さんから聞いた。ヒラメは基本的に海底にいるので、活きたイワシを錘の重みで海底まで落として餌とする。
その際に錘の重さに任せて海底まで一挙に落とすと、錘にイワシが引っ張られイワシが弱るはず。それを防ぐためにリールの糸に指をかけて(サミングというテクニック)、イワシの泳ぐ早さほどの速度で落とすという。なるほど、理にかなっている。僕が1匹釣るまでに10匹釣ったこともあるヒラメが得意な正林さんのご高設、さすがと思い、翌日はこの手で行くことにした。
9日4時過ぎに港に到着。釣り船は、直栄丸だ。片貝の船は大型船が多いが、この直栄丸も大きい。3連休の真ん中ということもあり、僕が座る左舷には7本の竿がずらりと並ぶ。
左舷一番前に僕、隣に岡野さん、その隣が正林さんだ。僕はいつも以上に気合十分、睡眠たっぷりの上に、リールを新調したからだ。ヒラメ釣りではずっと、10年ほど前に購入したダイワの電動リール、「レオブリッツ270」を使ってきた。ヒラメのポイントは水深約30メートルと浅いので、電動の必要はない。