つまり、おくだけ充電(Qi)対応の充電器であれば、『iPhone X』や『iPhone 8/8 Plus』『Apple Watch Series 3』を充電できてしまうわけだ。Qi対応の充電器は量販店やECサイトに数多く販売されているし、最近はあまりアピールしていないが、ドコモはおくだけ充電用の充電器をANAやJALの空港ラウンジやカラオケボックス、一部ホテルなどに設置している。ゆったりお茶を飲んでいる最中に、そこに置いておくだけでスマホが充電されていくのは、なかなか気分がいい。新型iPhoneの影響で、またQi対応充電器の設置場所が増えることを期待したい。
ただ、Qiにも弱点はある。もっとも大きな弱点は充電が通常のケーブルの充電より遅いことだ。2015年頃には、送電出力を上げて、これまでよりも高速で充電できるようになっているが、それでも高速充電ができる最近の充電器に比べると遅い。筆者自身の経験では、ケーブルの充電より1.5倍ほど時間がかかる感覚だ。
また、現状のQi対応充電器は送電コイル1つに対し1台しか充電できない。製品によっては2台の端末を載せることができても、1台ずつ充電される。複数の端末を同時に充電しようとすると、複数のQi対応充電器が必要になる。
しかし、そんなQiの充電器が大きく進化しそうだ。アップルが2018年に発売予定の「AirPowerマット」は、iPhone、Apple Watch、AirPodsの3つを同時に充電できるのが大きな特徴。どういう仕組かはまだ不明だが、複数同時に充電できるのであれば、多少、充電のスピードが遅くても気にならない。アップデートで充電速度が速くなるという情報もある。
来年発売予定の「AirPowerマット」は複数の機器を同時に充電できる。
スマホになってからは、ケーブルを差し込んで充電するスタイルが普通になった。USB Type-CやiPhoneのLightningケーブルは向きを気にせず差し込めるようになったが、よく考えると、毎度ケーブルを抜き差しするのはやっぱり面倒だ。Qiが広がることでフィーチャーフォンのように充電台に置いて充電するスタイルが復活するかもしれない。それも、充電端子の位置を気にせず、ただ置くだけでいいのがミソだ。
取材・文/房野麻子