2009年、法相宗大本山 興福寺(奈良県)の阿修羅像や天平彫刻で構成された「国宝 阿修羅展」が開催され、約94万人もの入場者が訪れた。これは仏像ブームのきっかけと言われ、それ以降、仏教全体への関心が上向いているようである。もともと仏教は、本来の宗教的な救いに加え、茶道、精進料理、仏画や仏像などの芸術、建物、庭園など、文化的側面でも暮らしを豊かにしてくれた。「挨拶」「大袈裟」「勿体ない」など、日常生活で使われる言葉にも仏教用語が多用され、日本人の心に深く根付いている。
■日本人の宗教観には、長い歴史がある?
クリスマスを祝い、寺院の除夜の鐘を聞き、寺院や神社に初詣をする日本人の宗教観は、海外から「特殊」とか「寛容」、「無宗教」と言われることが多い。実際、実家と離れて暮らしていたり、嫁いでいたりなどで自分が何宗の信者かわからないこともある。国内の各宗教の信者を合計すると、人口の2倍になると言われることもあるが、これはあながち間違いではないようだ。文化庁の宗教年鑑によると、各宗教団体から報告された信者数を合わせると2014年末で1億9021万9862人と、当時の日本の人口約1億2729万人の1.5倍以上。仏教系は約8713万人の信者を抱えている(参考サイト⇒宗教統計調査結果)。
我が国の信徒数(2011年12月31日)
日本は古来から、神道の神々を信仰していたが、仏教が伝来すると、聖徳太子が日本の統一を実現するためにこれを取り入れた。導入期こそ対立はあったものの、敵対するよりは「仏様もお仲間に」という神仏習合(しゅうごう)を選ぶのが多神教的なとらえ方なのであろう。仏教も古代インドの在来宗教や中国 の道教との習合を経て日本に伝えられたため、神道との相性は良かったのではないだろうか。8世紀に編さんされた『日本書紀』には「天皇、仏法を信じ、神道を尊びたまう」と記されており、日本人の宗教観は、この時代から培われてきたのがわかる。
また、同じ部屋に仏壇と神棚の両方を祀る場合、神棚は目線より上に、仏壇は正座して拝める高さに、向かい合わせにならないよう少しずらしてお祀りする。これは、片方を拝む時にお尻を向ける失礼がないようにするためだという。さて、「西遊記」でおなじみの三蔵法師には、道昭(どうしょう)という日本人の直弟子がいたことをご存知だろうか。三蔵法師は遣唐使として入唐した道昭をことのほかかわいがり、同室で暮らしながら指導していたとか。日本に戻った道昭は、法相宗の開祖になった。妖怪退治はフィクションであっても、一人で天竺(てんじく=今のインド)へ行き多数の法典を持ち帰った三蔵法師の冒険譚を直に聞いていた日本人が存在していたと思うと、ちょっとワクワクしないだろうか。
NTTタウンページは、タウンページデータベース(職業別電話帳データ)を活用してさまざまなマーケティング情報を提供しており、同社が運営するタウンページデータベース紹介サイトで毎月、独自の都道府県ランキングを公開しているが、昨年「寺院」に関するランキングを発表した。
■日本海側が信心深い理由
業種分類「寺院」の登録件数を見ると、この10年で6万3596件から5万6741件に減少。地域の過疎化や人口減少が原因で、寺院にも後継者不足の影響が見られる。
業種分類「寺院」の登録件数推移(2007年~2016年)
人口約10万人当たりの登録件数でみると、寺院が最も多いのはダントツで福井県(162.78件)。2位が島根県(132.14件)、3位が富山県(125.42件)となった。ちなみに業種分類「神社」でみると、人口約10万人当たりの登録件数1位は島根県で、寺院1位の福井県は12位。つまり、福井県は寺院が多いが神社はそれほどではなく、島根県は寺院も神社も多いという結果になった。