今多くの女性の間で流行っている弾性ストッキングや着圧タイツ。この弾性ストッキングは一般医療機器のものも出ており、その効果は大いに期待できる。とはいえ、まだまだ活用法や、利用価値のあるシーンはあまり知られていないところもあるようだ。
そこで、弾性ストッキングコンダクターでもある血管外科の医師に、活用法と利用シーンを聞いた。
■医療用「弾性ストッキング」の機能と効果
いわた血管外科クリニックの岩田博英先生によれば、一般医療機器の弾性ストッキングは次のような機能と効果があるという。
「医療用の弾性ストッキングは、疲労軽減・回復に有効です。人間の体は心臓がポンプとなって全身に血液を送っていますが、送られた血液は再び心臓に戻ってきます。心臓から遠くにある脚は、立っているとき、重力に逆らって心臓まで血液を戻さなくてはなりません。そのため脚はポンプの働きを担うために、腕より太く、筋肉量が多くなっています」
医療用の弾性ストッキングは、もともと「下肢静脈瘤」という、足の静脈が太くなり、こぶができる病気のだるさや重さの軽減に使われているものだ。また、「エコノミー症候群」の予防にもいいといわれており、実際、熊本地震の際、車内泊が続いた避難者が重宝したという。
しかし、医療用の弾性ストッキングは、普段の生活の中でも、疲労軽減・回復に使えるという。特に女性は大いに活用できるそうだ。
「女性は男性に比べて筋肉量が少なく、むくみやすい傾向があります。脚の筋肉のポンプがうまく作用しない状態になっているからです。そこで弾性ストッキングは、脚に適度な圧力を加えます。また、足首の圧迫圧が最も高く、大腿(太もも)に向けて圧迫圧が低くなる“段階的圧迫圧”によって作られているので、静脈還流※を改善するのに有効です。脚の静脈が滞りなく流れれば、むくみも改善します」
※静脈還流(じょうみゃくかんりゅう)…心臓から出た血液が、動脈を介して全身に行き渡った後、静脈を介して再び心臓へ戻る流れのこと。特に脚で静脈の流れが滞ると、むくみが起きてくる。
■むくみが起きたらまずは運動を
「30~40代の女性が脚のむくみ、だるさを訴えて、外来にいらっしゃいます。そのほとんどの人が運動されていません。最初から弾性ストッキングを勧めるのではなく、脚の筋肉ポンプを増強させるため その人に見合った運動を勧めるようにしています。それでも改善されなかったら、弾性ストッキングを着用するように勧めています」
医療用の弾性ストッキングは、普段の立ち仕事やデスクワークで起きる脚のむくみ改善に大いに役立つ。しかし、はじめから弾性ストッキングに頼るのではなく、まずは運動からはじめたほうがいい。その上で、まだ改善されないという場合に、弾性ストッキングを利用してみよう。