■医療用の弾性ストッキングが活かせるシーン
よく、脚を酷使したり、長時間のデスクワークで動かさなかったりした日の帰宅後に、弾性ストッキングを着用するという使われ方がされている。しかし、この“後で着用する”というのは、あまり効果はないそうだ。
岩田先生によれば、弾性ストッキングは、立ち仕事や歩き仕事、スポーツなど、その最中に着用することで効果を発揮するのだという。そこで、特に医療用の弾性ストッキングが活躍するシーンを挙げてもらった。
●立っている時間が長い場合
「私自身の経験から、激しい動きがなく、立っている時間が長い時に使用するのがおすすめです。飲食業の方、特に厨房で長く立っている方などには、着用をすすめています。圧迫療法により、静脈還流の改善の他に、静脈弁※1機能の改善、リンパ液の微小循環※2の改善が期待されます」
※1:静脈弁…血液が心臓に向かって戻るときだけに開く静脈にある弁。逆流を防ぐ。
※2:微小循環…血液と細胞との間で行われている、栄養素や酸素の供給と老廃物や二酸化炭素の除去のやりとりのこと。
●歩く距離が長い場合
「出張のときなど、歩く距離がいつもより長くなるときに使用するとよいでしょう。その他、ゴルフや登山のときにも使用すると楽です。」
●激しい運動時にはスポーツ用タイツを
「マラソンなど激しい運動をするときは、膝などの関節のサポート効果や、温度調整なども必要になってくるので、スポーツ用タイツなどのほうがおすすめです。弾性ストッキングよりも圧がなく、動きやすいように作られています」
ちなみに、岩田先生によれば、医療用の弾性ストッキングは就寝時につけて寝ることは想定されていないという。市販の医療用ではない弾性ストッキングや靴下には、「就寝用」とされているものがあるが、それとは混同しないように使用したい。
弾性ストッキングは、シーンに応じて使い分ければ、足の疲れやむくみを効果的に軽減することができる。一度使ってみると、その脚の軽さと楽な感覚はクセになる。ぜひ活用してみよう。
(取材協力)
いわた血管外科クリニック 岩田 博英先生
昭和63年名古屋大学医学部卒業。医学博士。 名古屋大学医学部第一外科入局 (現血管外科)。平成10年よりアメリカ ノースカロライナ大学血管外科留学。平成17年より愛知医科大学血管外科在籍。平成25年10月いわた血管外科クリニックを名古屋駅前に開設。日本静脈学会評議員。日本脈管学会評議員。日本外科学会指導医、専門医。血管内レーザー焼灼術指導医、実施医。日本脈管学会専門医。弾性ストッキングコンダクター
http://iwata-varix.com/
取材・文/石原亜香利
※記事内のデータ等については取材時のものです。