◎医療費の総支払額を抑えるために「限度額認定証」の申請をしよう
「なんとか病院の窓口で支払う金額を抑える方法は無いものか…」と思うなら「限度額適用認定証」の発行申請を健康保険組合にすればよい。この制度は、70歳未満の人が、病院の窓口で支払う医療費の上限を自己負担の上限金額までにできる制度だ。70歳以上の場合は、上限が別で定められていてかつ、認定証は不要で自己負担は上限金額までになる。先の例で紹介した標準報酬月額50万円で医療費が100万円だった場合だと、窓口で支払う金額が上限の8万7430円ですむ。認定証を貰うには、健康保険組合に申請書を提出するだけでよく、利用する医療機関名や金額などを記入する必要はない。認定証の有効期間は1年。申請が受理されれば限度額適用認定証が届くので、病院の窓口で診察券を出すときに合わせて保険証と限度額適用認定証を提示すればよい。高額な医療費を支払う機会はいつ訪れるかわからないので、大きな病気やケガをする前に発行申請しておけば安心だ。ただし、受診する医療機関ごとに入院・外来別で上限が適用されるので、短期間に複数の医療機関にかかった場合は合算して高額療養費の申請を行う必要がある。
限度額適用認定の申請書の例。協会けんぽより引用
記入項目は適用期間などで、病名や想定金額まで記入する必要はない。申請書の記入という観点でみれば、高額療養費の申請より楽。
実際の限度額適用認定証の例。有効期間は1年間で、見た目はカード化される前の健康保険証に似ている。
医療費の実質負担額を少なくするために入院保険を利用しているなら、窓口の支払額を少なくできる「限度額適用認定証」もぜひ発行申請しておきたい。支払総額が少なくなれば、精神的な負担はより小さくなるはずだから。
ちなみに、こういう制度を紹介すると、「高額介護合算療養費」の話が抜けているとか、所得税の医療費控除について言及がないとか、75歳以上の後期高齢者の話はどうするのだといった類の指摘を受けることがあるが、一般的なサラリーマンが最低限知っておくべき制度概要の紹介記事としてとらえてほしい。
文/久我吉史
※記事内のデータ等については取材時のものです。