魚は成長にともない、値段も人気も高くなるものが多い。秋の味覚サンマも小さく痩せたものより、大きくずんぐり太っているもの。出世魚の代表格、ブリも大きいものが好まれる。
では、江戸前寿司でおなじみのヒカリもの、コハダはどうだろう。
実はこの魚も成長にともないシンコ→コハダ→ナガツミ→コノシロの順で名前が変わるのに、コハダの名ばかり聞く。しかも、魚そのものの姿ではなく、酢〆された寿司ネタ状態のものを思い浮かべる人が多いようだ。なぜなのか?
などと問うと
「それはコハダの時が一番うまくて酢〆が最高だからだよ」
なんて答が出てきそうなので、強く書いておこう。
コノシロだって、とびきりうまいのです。ウソだと思ったら、今すぐ熊本に飛びましょう。
■熊本では冬の代表魚
熊本、とくに県南におけるコノシロの認知度はとても高い。県は熊本の四季を代表する新鮮でおいしい17種類の魚を「くまもと四季のさかな」に選定し、冬の代表としてコノシロを紹介しているほどだ。漢字で「魚へんに冬」と書くことからも、旬の正当性はわかっていただけるはずだ。
気になる値段は、丸もの状態の4尾パックで200円もしない。驚くほどの激安だ。理由は大量に獲れるうえ、せいぜい20センチ程度なのに小骨が多いから。店としてはウロコや内臓を取る手間をできるだけかけたくないという事情もある。タイやヒラメなら無料でさばく店もコノシロは対象外になる。