●海馬を鍛えるとストレスにも勝てる
←ジョギングの目安は、分速110~120m。歩くスピードを限界まで速くして、同じ速度で走る、それが本来のジョギングだ。「ジョギングでは大きく腕を振る必要はない。肩の力を抜くことがポイント」(征矢教授)。
では、海馬が刺激されると、どういう効果が期待できるのだろう。
「海馬は学習や記憶などの役割を持っています。昔のギリシャでは哲学者が歩きながら議論していましたが、彼らは軽い運動が発想を豊かにすることを知っていたのでしょう。加えて海馬は、欲望やストレスの脳である視床下部が暴走するのを制御しています。つまり、海馬を鍛えることで、ストレスに強い脳を作ることができるのです」
さらに、ランニングやエアロビクスなど中強度の運動は、前頭前野にある、情報を統合する役割の46野を活性化させる。46野は分析や判断、集中力に関係している部位で、この活動が低下すると認知症や鬱病を患う可能性がある。46野を刺激することで、仕事の判断力が向上するとともに、認知症の予防も期待できるというのだ。ちなみに、46野を刺激する中強度の運動は、心拍数110~130が目安だ。これ以上激しい運動では、視床下部を刺激してしまい、ストレスや雑念を感じるようになってしまう。脳のためには、苦しくない程度の運動で十分なのだ。ただ、軽い運動でいいと言われても、運動する習慣がない人は、なかな腰を上げることができないかもしれない。
「走ろうと思った時に音楽を聴くのが効果的です。音楽は感情を生み出す回路を活性化しますから。『健康のため』『(タイムなど)パフォーマンスを上げたい』『気持ちいいから』。この3つが担保されれば運動を習慣化することができるでしょう」