◆デザイン作成から、染色、織り、アフターメンテナンスまで一貫して行う
○割付図作成
同社ではデザイン作成から加工、アフターメンテナンスまで一貫して工場で行っている。現在、日本画家の千住 博氏が手掛ける、鶴岡市文化会館の緞帳(20m×9.5m)「水神」を製作中。デザイン室はデザインの創造はもちろん、そのデザインをじゅうたんでどう表現するかを考え製作図面を作る仕事も担当している部署で、「割付図」と呼ばれるじゅうたんと同じ大きさの設計図を作る。割付図を作ることにより、必要な毛糸の色数、量がわかり、緻密なものだと割付図だけで2カ月かかるという。「水神」は75色を使う大作で、割付図にも細かい数字が並んでいる。
○織り
じゅうたんの織り作業は「手織」と「手刺」の2種類がある。手織は細かな割付図(下記画面奥にある方眼紙)をもとに、たて糸に糸を結びカットしていく作業で、専用の道具で織り目の密度を一定に整える。手作業なので1日に織りあげる長さは7cm程度だ。
手織でウールのじゅうたんを作っているメーカーはオリエンタルカーペットを含めて日本では2社しかなく、京都迎賓館のような大きなものでは、手織ができる職人が10人がかりで約2年かけて1枚のじゅうたんを織ったという。
個人ユース向けの「山形緞通」では「クラッシックライン」と呼ばれる、3タイプが手織で製作されている。正倉院の仮想の花をモチーフにした「えびかずら宝相華」、能装束の柄をモチーフにした「千秋(せんしゅう)」(下記画像)、日本伝統柄の桜をモチーフにした看板商品である「桜花図」の3種類で、手織じゅうたんは手間と時間がかかるため、玄関マットが税別で50万円、100万円、二畳サイズは250万円、300万円、縦横262cmの正方形で570万円とかなり値が張る。
「桜花図」はエンボスという凹凸のある技法で作られている。立体的に見せたり、輪郭を浮き出させたりするカービング作業など、熟練の技が必要となる。表面を整える作業も凹凸があるため、手ばさみでカットしていく(下記画像)。
図案に合わせてフックガンという工具で織る技法が「手刺」。手織に比べると製作時間を短縮できるが、的確に柄を表現するために、打ち込む力やバランスを均一に保つ技術が必要となる。手刺は糊を使うが、同社の製品はクリーニングを前提としているため、経年しても硬化しない糊を使用している。そのため年月が経ってもやわらかさが変わらないのも特長だ。
手織よりも価格が抑えられるため、30~40代といった若い世代で良いものを求める層に向けて「現代ライン」と呼ばれる、25~41色をグラデーションで表現したシリーズ(税別11万円~60万円)、「牡丹」と「石楠花」の2タイプの「新古典ライン」(税別15万円~90万円)を展開している。