■お局様の生態(3)「なぜお局様化してしまう?」
では、なぜ「お局様」という現象が生まれてしまうのだろうか。充隆さんに解説をしてもらった。
「先ほどもお話したように、お局様になりうる方は、満たされない心を持っています。つまり、それをどうにか満たそうと、常に自分の存在を認めてくれる人を探しているのです。しかし昨今の職場環境を見ていれば言わずもがな、心を満たすような環境が整っているとは限りませんし、どんな環境でも「Being」を満たすことは難しい。問題はそれだけではありません」。
ここで改めてお局様をイメージしてほしい。一般的な「お局様像」とは、ある程度年齢を経た人ではないだろうか。つまりお局様とは、ある程度職場で権力を有している人でもある。ここがミソなのだ。
「どんな人でも長年その職場にいると、ある程度の地位や権力を獲得します。その結果、長年働くことによって得た仕事能力と権力を、私的に利用し、自分を敬ってくれる、もしくは自分を大事にしてくれるような人間を周りに置いて、「Being」を満たそうという行動を始めます。お局様は、自分の存在を認めてくれる人間を周りに置き、「Being」を満たすエネルギー補充を続けているのです」。
確かに言われてみれば、お局様の周りはイエスマンが多かった気がする……。充隆さんは続ける。
「最大の問題は、このお局様的行動をとっても「Being」は満たされないこと。満たされない心が解消されないところにあります。先ほども述べたように、あくまで仕事能力を認められた「Doing」の範囲であり、存在レベルでは愛されても、受け入れられてもいないからです」。
なんという負のスパイラルだろうか。筆者を含めた3人全員が顔をしかめた。
「これでは欲求不満が心に残るばかりか、むしろ不満がどんどん積み上がっていっていきます。お局様の行動が年々エスカレートしていくのはそのためでしょう。毎日のように「自分はすごいんだ」と証明し続けなくてはならず、そうやって永遠に、自分に言い聞かせ続けることになります。お局様は、魂の私腹を肥やし続けているのです」。
これがお局様の正体であり、お局様が職場に君臨し続ける理由だ。
■お局様に限らず、すべてがつながっている
お局様の攻略法に行く前に、ちょっと脱線するが、お二人からとんでもない話を聞いたので、ここに書き記したい。先ほども書いたが、お局様が誕生する理由として、満たされない心がある。それは親の愛情不足・教育不足が関係していると述べた。この「親の愛情不足・教育不足」は、結果的にとんでもない社会現象を引き起こしていた。
「今の日本では、安定した心を持っている人が少なくなってきています。多かれ少なかれ、誰しもが心に不安定さを抱えているのです。この要因は複雑で様々あるので、非常に簡単に話すと、価値観の多様化、そして親世代の心の不安定さが挙げられます。特に親世代の心の不安定さは、子どもに影響します。オトナになりきる前に親になってしまったので、子どもに愛情ある接し方や正しい怒り方など、親としての接し方が出来ないのです。その結果、その子どもは親に心を支えてもらえないまま成長し、同じように不安定な心を抱えることになります」。
この心の脆弱さがお局様になりうることを述べたが、お二人によると、お局様だけではないらしい。
「昨今、パワハラ、モラハラ、モンスターペアレンツ、悪質クレーマーなど、様々な人間関係の問題が起きていますよね?あれは全て心の不安定さからくるものです。その元凶は、親の教育や社会環境によるところが大きい。現在の日本社会では、こういった人が増えています。今の日本は、パーソナリティー障害の時代と言われているのです」。
お局様の問題は、日本人が抱える問題の氷山の一角といえることだった。