軽い=使い勝手が悪いは、昔の話。近頃のアウトドアギアは、軽くても機能性が高いが当たり前。そこで、軽量なギアでフィールドを楽しむ〝ウルトラライトハイキング〟を提唱する土屋智哉さんに、おすすめのギアを紹介してもらった。
◎自然との距離を近づける〝ウルトラライト〟の発想
「軽量化の歴史はアウトドアの歴史そのもの。何も新しい概念ではないですよ」
そう語るのは、軽量ギア専門店、ハイカーズデポの土屋智哉さん。学生の頃からフィールドに出る際は、歯ブラシの柄を折るなどの軽量化を図っていたという。確かに、登山などで厳しい状況になれば、軽さによって命が助かることはある。軽量絶対主義と言ってもいいアウトドアの世界だが、10年ほど前の〝ウルトラライト(以下UL)ハイキング〟というムーブメントが、さらに軽量化を推し進めた。
「ちょうどその頃、4000km以上を踏破するロングトレイルが流行り始めました。半年もかかるので、家財道具一式を背負って歩くんですよ。それを機に、あらゆるギアの重量が見直されたのです」
そのあたりからの技術の進歩はすさまじいものがあった。金属でいえばチタン製品が当たり前に登場し、さらに、軽く、強靭なナイロンによりテントやバックパックも軽量化された。
しかし、土屋さんが考えるULは、ただ単に軽いギアを集めて楽しむことではない。ULなギアを使うことで、自分と自然との距離感を調節しながら楽しめる、というのだ。
「僕らはフィールドに出て、タープだけ張って寝ることもあります。そうすると地面や空と一体化した気持ちになるんです。自然との距離がグッと近づくんですよね。でも『そんな野宿はいやだ』というなら、重くてもしっかりしたテントを持っていけばいい。食事は妥協できないなら、ほかを軽くすればいい。基本は楽しむことですから、全部でも、一部でも軽くシンプルにすることで、自然との距離を近づけて楽しんでほしい。それがULの醍醐味です。ULの考え方って〝ミニマリズム〟にも通じるものがあるかもしれない。シンプルにすることで、豊かになることがある。それに気づくと人生が変わるかもしれないですよ」
Hiker’s Depot 店主
土屋智哉さん
ウルトラライトなアウトドアギア専門店を営む。ただ「軽さ」を求めるのではなく、その先にある自然とのつながりを楽しむ求道者でもある。
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