「YES!」のCMでおなじみの高須克弥院長。そのキャラクターから、世の弱気なビジネスパーソンに、「NO、NO、NO」と、活を入れると思いきや、意外にも慈愛に満ちた助言をくれた。その言葉とは?
◎〝心の美容〟でもあるメンタルヘルス
ここ数年、仕事上での過労死の問題がクローズアップされています。それに伴って、企業は、社員の精神面における健康、いわゆる〝メンタルヘルス〟をどう維持すべきか、その対策に追われるようになりました。
僕は、やはりCMのイメージが強いせいか、社員に対して、
「ヤル気のないヤツは辞めろ!」とか言いそうだと思われがちですが、実は、若い人たちのメンタル面の変化については、かなり以前から気がついていました。企業に所属する産業医となっている知り合いも多いだけでなく、僕自身、複数の病院を持つ経営者だからです。
昔は、〝地獄の研修〟のような、新入社員をバンバン鍛えるようなやり方も、企業によっては珍しいものではありませんでした。でも、今は状況が一変。しかも、単純にやさしくすればいい、というわけでもなく、その対応は難しくなっています。
例えば、調子が悪い社員に、
「しばらく休んでもいいよ」というと、「自分は会社に必要がない人間なんだ」と深刻に受け止める人がいます。仕事量を減らすと、「自分はもうダメ社員と認定されてしまった」と本気で悩む場合もあるのです。
鬱の人に、軽々しく「がんばれ!」などといった叱咤激励してしまうと、最悪の場合、それが背中を押して、自殺してしまうケースもあるのです。
ちょっと前なら、「最近の若いヤツは我慢が足りない」といった括り方ですんでいたかもしれません。ですが、今は若者の多くがそうであることを前提とすべきでしょう。
もちろん、メンタルヘルスが必要なのは、若い人ばかりではありません。サラリーマンも40代に入ると、自分が出世のラインに乗っているのかどうか、大体わかってきます。当然、ラインから外れてしまった人はなかなか仕事に対するモチベーションが上がりません。
すると、何かにつけて考え方が〝守り〟に入る。自分の昇進や収入がどれくらいで頭打ちとなるのか。これから、たいして給料が上がらないのなら、せめて老後は安心して過ごせるように、今から貯金はしっかりしよう——そんなふうに考えてしまうものです。世の中には、老後の不安を煽るような情報もあふれていますし。
◎貯金はするな! 使え!
こうした傾向は、個人だけの責任ではなく、日本の社会が後押ししている部分もありますね。何年にもわたって、日本の経済は停滞していて、給料や物価が上がらないどころか、むしろ下落している。現金を貯め込んでいた人が有利な世の中になっていたのです。
仕事へのモチベーションが上がらず、お金は使うよりも貯め込むようになる。そんな日々を重ねていくと、さらに気持ちはネガティブになっていきますよ。取り立てて、楽しいことがないんですから。
完全に〝負のスパイラル〟に巻き込まれた状態。今の若い人もこのスパイラルにハマってるんじゃないですか。将来に希望が持てない人とか。