【サラリーマン相談室】倒産の可能性がある会社で単身赴任の辞令が出ました。

【さとうみつろうのサラリーマン相談室】倒産の可能性がある会社で単身赴任の辞令が出ました。

——営繕係休憩室。それは、あなたの会社の中にある秘密の扉。会社の中で、あなた以外は誰も知らない秘密の部屋。悩んだら、いつでもおいで。悩みがなくても、遊びにおいで。さぁ、今日もひとりのサラリーマンがその扉のノブに、そっと手を伸ばしたようです。

【今週のサラリーマン相談】

会社の経営が厳しくて、倒産する可能性が出てきました。そんなタイミングなのに、東京から大阪へ単身赴任せよとの辞令が出ました。社宅は狭いし、大阪は言葉や文化の壁もあるので、会社を辞めたいのですが、転職できるかどうかという不安もあり、身動きが取れません。
サラリーマン中川（入社16年目、39歳、メーカー勤務、東京都）

営繕のみつさん（以下、みつさん）「不安だらけで、逆に笑えるね」

サラリーマン中川（以下、中川）「え？　深刻な悩みを抱えてやって来た相談者を笑うなんて、神経を疑います」

みつさん「君が笑えないと言うなら、僕が君を笑ってあげるしかないじゃないか。会社がつぶれそうです、でも転職も怖いです、家は狭くなります、言語や習慣の壁で大変な目に遭いそうです。ぷぷぷぷぷ」

中川「笑いごとじゃないんですよ！　沈み行く会社に残って溺れるか、大海原にひとりで飛び込んで溺れるか。大阪で毎晩ご飯のおかずにタコ焼きが出されて、炭水化物地獄で溺れるか。……ぜんぶ嫌です」

みつさん「大阪人をバカにしとんのかいワレ！　タコ焼きがご飯のおかずで、何が悪いねん！」

中川「あ、すみません。営繕のみつさんが大阪出身とは知らずに……」

みつさん「いや、僕は沖縄出身だけど？」

中川「じゃあ、何で怒ったんですが！　あんた、さっきから、いったいなんなんですか？」

みつさん「君は、怒ったり、謝ったり、悩んだりと、本当に大変そうだね。

　いいかい、実は君の不安には共通点がある。何だと思う？」

中川「タコ焼き地獄、会社の倒産、転職失敗、社宅が狭くなる……、共通点なんてあります？」

みつさん「社宅は、どこにある？」

中川「大阪です」

みつさん「タコ焼きはどこにある？」

中川「大阪です。……。ん？　共通点って、ひょっとして『大阪』ってことですか？　僕の鬼門は大阪なのか??　大阪へ行くと、悪いことが起こるみたいな？？」

みつさん「ここは風水占いじゃないわい。どんだけ大阪が嫌いやねん！

　いいかい、よーく考えてよ。その狭い社宅があるのは、どこ？」

中川「いや、だから大阪ですってば。僕の鬼門の方角の！」

みつさん「違うよ。社宅があるのは『未来』さ。タコ焼きがあるのも、『未来』さ。会社の倒産も、『未来』で、転職失敗も、『未来』だ。君の不安がある場所は、全部が『未来』じゃないか。今、社宅にいるのかい？」

中川「いや、今は営繕係休憩室にいます」