宇宙はビッグバンによって誕生した。それから約138億年後の現在、宇宙ほど規模は大きくないものの、新たな広がりを見せているものがある。レモンと甲類焼酎・炭酸というシンプルな構成要素からなるレモンサワーだ。中目黒にあった旧『もつやき ばん』で、ドカン!?とそれは誕生した。
正確には誕生ではなく命名なのだが。「元々、“タンチュー”と呼ばれている焼酎の炭酸割りに、レモンを入れるというメニューはあったけど、名前がなかった。それで何か名前を付けようということになって。飲み口がサッパリしていて嫌味がなく、爽やか。その爽やかさから“サワー”がいいんじゃないかと。で、レモンサワーになったんだよ」と語るのは中目黒の旧『もつやき ばん』※で働いていた、店主の弟であり、旧『もつやき ばん』の味を楽しんでもらうべく、祐天寺で『もつやき ばん』を営む小杉 潔さんだ。「今からもう、56年も前のことだよ」。
キンミヤ焼酎(25度)、レモン1個、炭酸という構成。半切りにされたレモンを自分で搾ってキンミヤがたっぷり注がれたジョッキに入れ、さらに炭酸を注ぐというスタイルも当時のままだそうだ。「自分で搾った方がさ、作る楽しみがあるでしょ。レモンの量、炭酸の量も好みに調整できるし。それにさ、手についたレモン果汁は自分の手にすり込んちゃうんだよ。レモンには糖度がないからベタつかないし、ビタミンCたっぷりで肌にもいい(笑)」。目からウロコのレモン活用法! 確かにもう70を超える小杉さんの手は……ツルツルに見えないこともないか、な。
自分好みのシンプルな美味しさに加え、自分で搾った半切りのレモンを串刺しにして積み重ねた様子がフォトジェニックだとインスタにアップする人も増え、近年ますますレモンサワーが人気なのだそうだ。