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「あたりまえ体操」を世に送り出した音楽クリエイターが当たり前にやっていること

2017.05.12

■地獄のルーティーン!

井上:それではもう1つ、樋口さんが音楽制作を通して得たライフハックをお願いします。

樋口:かしこまりました。それではいきます。

「あたりまえ体操」を世に送り出した音楽クリエイターが“あたりまえにやっていること”
「地獄のルーティーン!」

井上:さきほどに続いて、耳に残るタイトルですね。解説のほう、お願いいたします。

樋口:実は、私はもともとルーティーンが大嫌いでした。決まった時間に起きて、決まった時間に仕事をして、決まった時間に寝る。本当に嫌いでした。しかし音楽制作を通して、ルーティーンを設定しなければ何も達成できないことに気がついたんです。

井上:いつ気づかれました?

樋口:大人になって初めて自らトランペット教室に通い始めたときのことです。せっかくトランペットを買っても、なんだかんだ時間を奪われてトランペットが吹けませんでした。若い頃はあんなに楽器をいじくっていたのに、大人になると暇を持て余す時間がなくなったのです。

井上:「時間がない」はオトナのいやーな口癖ですね。みんな一様にボヤいています。

樋口:「時間がない」に打ち勝って、何かを達成するためには、ルーティーンの設定が不可欠でした。ただし、これは世間で言われているものとちょっと違います。「やらなければいけないこと」だけをルーティーンに組み込むのではなく、「やりたいけどできていないこと」も組み込んでいくのです。

井上:やりたいこともですか?わざわざ組み込む必要はありますかね?

樋口:仕事で忙しくなると、やりたいことほど後回しにしがちです。私の場合は、映画を見たり、旅行に行ったりすることができていませんでした。ふとある日、(最近、何回映画を観に行った?)と考えてみたんです。すると、1年間でたった数回でした。趣味は映画観賞のはずなのに、もう趣味なんて言えません。

井上:言われてみれば・・・また耳が痛くなってきたな・・・。

樋口:この状況を打開すべく、仕事や行事のつもりで「やりたいこと」、つまり旅行や映画もルーティーンとして差し込むことにしました。私たちの日常は仕事だけでかつかつです。その上、恋愛をして、友達と遊んで、結婚をしてしまうと子育てが入り、金が要るから余計に仕事を頑張り・・・。「やるべきこと」の連続的な出現で人生がどんどん過ぎていきます。だからこそルーティーン化して「やりたいけどできていないこと」を生活にねじこむべきです。

井上:「やるべきこと」は一生減らないですよね。「いつか弾こう」と思って買ったギター、「いつか飲もう」と約束した友達・・・。みんな「いつか」でどんどん時間が過ぎています。

「あたりまえ体操」を世に送り出した音楽クリエイターが“あたりまえにやっていること”
オフィス樋口のレコーディングルーム

樋口:ルーティーンを考える上で、ドラムをイメージしてください。ドラムを叩くときは体にリズムを刻みこみ、自動的にたたく練習をしています。しかしあの無数の「一定のリズム」を1つ1つ考えながら叩いていたならば・・・どうでしょう?

井上:おぞましい。やるべきことの連続で頭がパンクします。

樋口:「よーし、まず足でバスドラムを叩こう→ドン→よし次は右手で・・・」。このようなことを考えながらやっていると、良いリズムは生まれません。考えずにやっているからこそ、ドラムは良いリズムになります。ルーティーンもこれと同じです。設定することで、「やるべきこと」も「やりたいけどできていないこと」も生活の一部としてまわり始めます。そして一度設定したルーティーンは、地獄のトレーニングのようにこなしていくのがポイントです。どうしてもやれないときがあるのは仕方ないですが、とにかくリズムを意識してこなしていくことが大事です。

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