■カカオと抹茶の『香り・旨み・苦みと渋み』
本シリーズの一番の特徴は「Bean to Bar(ビーントゥバー)」。“豆からチョコレートまで”一貫して手掛ける製法だ。明治はガーナ共和国やベネズエラ・ボリバル共和国などの現地でカカオの生産をサポートし、支援を行っている。現地で発酵、乾燥させたカカオ豆を輸入し、国内でチョコレートに加工している。自分たちで良質な豆を作り、仕入れているため、カカオ豆には自信がある。
このたび新たに加わった抹茶味について、開発担当の宇都宮洋之さんに単独インタビューを行った。
「一般的に抹茶味のチョコレートは、カカオの油分であるカカオバター、ミルク、砂糖を混合したホワイトチョコレートに抹茶を混ぜて作られます。しかし、カカオと抹茶にはそれぞれの『香り・旨み・苦みと渋み』があります。それをあえて合わせることで、相乗効果が生まれ、より強い味わいが出るだろうと考えました。そしてダークミルクチョコレートに抹茶を入れる形にしました」
■カカオはベネズエラ産、抹茶は愛知県西尾産をメインに使用
カカオと抹茶の素材も、こだわりを持って選ばれた。カカオはベネズエラ産、抹茶は愛知県西尾産をメインに使用されたという。
「ベネズエラ産のカカオ豆は、旨みが強く、カカオ感を強く作り上げたので、抹茶と合うと考えて選びました。また、日本人になじみのある味でもあります。抹茶は京都の宇治、愛知県の西尾産、静岡産などを検討したところ、『旨み・香り・色』の3点から西尾産がふさわしいと思いました。その旨みと香りがベネズエラ産カカオと合い、色は茶色のチョコレートの中に入れても負けない緑色の強さがあることが決め手となりました」
ところで、カカオと抹茶それぞれの「旨み・香り・苦みと渋み」同士が相殺されることはなかったのだろうか。
「昆布だしとかつおだしを合わせても旨みを消し合うことはなく、よりおいしくなります。これと同じように、カカオと抹茶の旨みをより高める素材を選び、配合の調整を行うことで、お互いの良さを引き立てることができました。
苦みと渋みは、旨みを合わせること、酸味のカカオを少しブレンドすることで調整しました。
香りについては、抹茶を混ぜ込んだ一層構造では香立ちが弱くなるため、この商品は二層構造にして双方の味わいを楽しめるようにしました」
■二層構造でカカオと抹茶の香りが時間差で発動
上の層…抹茶を入れ込んだダークミルクチョコレート
下の層…ダークチョコレート
「二層構造にすることで、口の中で溶けるタイミングがそれぞれ変わるため、カカオと抹茶の味と香りをより感じられるようになったと思います。一層も試しましたが、カカオと抹茶、どちらの味なのかわからなくなったんです」
味を調整していった結果、上下の層を合わせて、全体としてカカオの割合は58%となった。当シリーズのラインナップは、カカオそのものの味わいを楽しんでもらうというコンセプトに基づいている。抹茶味の調整の際にも、常に「カカオ分が50%以下にはならないようにしよう」と気を付けていたという。