——営繕係り休憩室。それは、あなたの会社の中にある秘密の扉。会社の中で、あなた以外は誰も知らない秘密の部屋。悩んだら、いつでもおいで。悩みがなくても、遊びにおいで。さぁ、今日もひとりのサラリーマンがその扉のノブに、そっと手を伸ばしたようです。
【今週のサラリーマン相談】
仕事の取引先から突然、出入り禁止を申し渡されました。その取引先とライバル関係にある別の会社に、私の同期が商品を売り込んだせいで先方が激怒したのです。私は長年かけて良好な関係を築いてきたのに、この一件ですべてが水の泡。一方の同期のその商品は、会社から表彰されるほどヒットしました。彼の栄光の陰に、私の犠牲があることを会社中に張り紙をして伝えたいくらいです。
サラリーマン中山(入社16年目、38歳、製造業、神奈川県)
サラリーマン中山(以下、中山)「彼だけ会社に評価されて、私の居場所がありません。マジで悔しいです」
営繕のみつさん(以下、みつさん)「話を聞いて思ったんだけど。結局、どうしたいの? 人間は感情的になっている時は、GOALが不明瞭になりがちだ」
中山「ゴールって何ですか?」
みつさん「どこに、到着したいのかだよ。君の相談は論点がはっきりしない。単純に、『どうしたいのか』だけを教えて。こっちも忙しいんだよ」
中山「どうしたいのかと、言われても」
みつさん「じゃあ、そのままでいいんだね」
中山「いや、ちょっとそのままは困ります」
みつさん「じゃあ、どうしたい? 今から一緒に、これから一緒に、彼を殴りに行こうか? そして、ガッツポーズでYAH! YAH! YAH!ってふたりで叫ぼう! よし、そうしよう!!」
中山「ちょ、ちょっと! そんなチャゲアスなノリじゃないです! 別に、同期を殴りたいわけではないですし」
みつさん「殴りたくはない、と。1つ選択肢が消えたね。じゃあどうしたい?」
中山「彼に謝ってほしい! 俺のせいで、ごめんなって言ってほしい」
みつさん「よし、それは無理だ。はい、次!」
中山「え? せっかく『どうしたいか?』の方向性がハッキリしたのに、却下するとは何事ですか?」
みつさん「今、さっきから聞いてるのは『どうしたいか?』だよ?
『謝りたい』だったら、OKだけど、『謝らせたい』は日本語的におかしいだろ(笑)。ギャグセンスあるなぁ~君ぃ」
中山「え? 何を笑ってるんですか? 一度もジョークなんて言ってませんよ? この状況で『謝りたい』って答えるほうが、おかしいです。
取引先との商談を同期のライバルに破断させられたんですよ。僕のほうから謝るわけないでしょ。何で、まだ笑ってんすか!」
みつさん「だって、どうしたい? って聞かれて君は、『謝らせたい』って答えたんだよ? ギャグにしか聞こえないよ。
『謝る』か『謝らないか』は【他者の問題】だから、君が踏み込めるわけないじゃん。今聞いてるのは、【自己の問題】だ。君は、どうしたいのか? と聞いてるんだ。
自己が、他者の問題を変えることは絶対にできないんだから」