【File no.3】上司から利益の水増しを強要され、断れず従ってしまった。
5年にわたって1500億円もの不正会計が行なわれていた東芝。上層部から現場に「チャレンジ」と称する圧力がかかり、利益の水増しが行なわれていた。
サラリーマンなら、もし自分が同じ立場で、要求に従った場合、自分も法的に処罰されるのかと考えずにいられないはずだ。
「粉飾決算に関わった場合、一般に金融商品取引法の有価証券報告書虚偽記載罪などに問われることになります。法定刑は10年以下の懲役、若しくは1000万円以下の罰金又はその併料。ほかにも詐欺罪や特別背任罪を問われることもありえます。
末端の社員で命令されてやっただけだといっても、条文上はアウトと言わざるをえません。ただ、実際に末端の社員まで起訴されるかは、ケースバイケースだと思います」
一般に検察は、事件の悪質性や本人の関与の度合いなど、様々な状況を加味して起訴・不起訴の判断をする。末端の社員まで全員起訴することもあれば、上層部だけに留まることもあるという。
【File no.4】部下のメールの内容が気になって、本人がいない隙に盗み見た。
隣の席の部下が席にいない時に、こっそり入手したパスワードを入力し、部下のPCのメールを盗み見たら、犯罪になるのだろうか。
「不正アクセス禁止法では、インターネットやLANなど『電気通信回線』を通じて、認証を回避するなどの行為を禁止しているので、直接PCや携帯を操作して情報入手する行為には適用されません。ただし、アクセスするために『他人の識別符号(パスワード等)を入手する行為』が処罰の対象になり、法定刑は1年以下の懲役、又は50万円以下の罰金です」
情報を盗み見ることではなく、パスワードをこっそり入手する行為のほうが犯罪になるのだ。
ただし、「不正経理の疑いがある」とか「私用メールが多すぎる」など、正当な理由がある場合に、会社のしかるべき部署、役職の人間が社員のメール(会社のPC利用)を監視することは違法性がないと認められた裁判例がある。
見られて困る私的メールは、私物のスマホなどでやりとりすべきであろう。