■証拠は本当に大事
「貸金での例を述べると、被告へのお金の振り込みを証明する「銀行の振込明細書」が原告側にあるとします。それを受けて被告側は「それは別の件で私が原告に貸していたお金であり、それを返してもらっただけで、今回の貸金とは関係ない」と主張したとします。
そうなると、残念ながら振込明細書はお金が動いたという証明でしかなく、お金を貸した直接的な証拠にはなりません」。
――銀行の振込明細書は「お金が動いた証明でしかない」ということに驚きました。証拠って本当に大事ですね…。
「結局裁判官は第三者です。当事者ではないので何も事実を知らない。どちらの主張がもっともらしいかという視点で見ています。そのため客観的な証拠があるかどうかが裁判の焦点となります」。
■証人に有利な証言をしてもらうにはどうしたらいいですか?
「まず証人の呼び方ですが、裁判所の担当書記官から「どのような裁判を予定していますか?」という問い合わせがくるので、その際に証人を呼ぶ旨を告げてください。
裁判を有利にする証言をしてもらうには、その証言によって原告の主張を裏付けることができる証言が望ましいです。たとえば「○○という場所で原告と被告がお金を貸すという話をしていた」、もしくは「○○という場所で原告と被告のお金の貸し借りを見た」という、原告の主張を裏付けるダイレクトな局面の証言をすることができれば効果的です。「あのときのこのような証言が必要だから、その証言を言えるようにしておいて」という打ち合わせをしておくべきですね」。
■裁判が終わった後は?
「判決が出ます。訴訟の事案によって即日出ることもありますが、後日判決が郵送されるケースが多いです。
裁判所が出した判決に対し、不服がある場合は「異議申立て」ができます。異議申立ては、裁判と同様に法廷で行われます。もう一度裁判をやるようなイメージです」。
■裁判が始まる前から裁判は始まっている。
「とにかく裁判は証拠が大切です。貸金を例に挙げると、トラブルになることを見据えて、お金を貸したと分かる証拠作りが重要になります。裁判を行うとは言わずに「○月○日に○○万円を貸しましたが、まだお金を返して頂けていません。返していただけますでしょうか」というメッセージを送り、その事実を認めさせる発言を引き出しましょう。相手が認めるような内容を返してくれたら、裁判が一気に有利になります」。
■少額訴訟を起こす上での注意点
「少額訴訟では被告の住所を特定しておく必要があります。裁判所から訴状や証拠などを送達するのですが、そこに被告がいないと届きません。そうなると裁判が始まりません。また原則として、被告の住所地の裁判所で裁判が開かれるので、こちらも注意が必要です。さらに原告の訴えに対し、判決が出る前に被告が異議を出すと、通常裁判に移行する可能性があります」。
■ちなみに
弁護士法人ベリーベスト法律事務所では少額訴訟を取り上げた記事を作成している。少額訴訟を検討している方は、こちらの記事も参考にしてほしい。
http://best-legal.jp/small-claims-1098
裁判と聞くと、なんだか尻込みしてしまうのが正直なところ。しかし少額訴訟は誰でも簡単に起こせる裁判だ。60万円以下の金銭のトラブルで悩む方は、とりあえず裁判所へ行くことをオススメする。この記事によって、お金に悩む人々のトラブルが少しでも解決することを願う。
取材・文/いのうえゆきひろ
※記事内の情報は取材時のものです。