■証拠の提出って難しいですよね…
「証拠は基本A4の紙で用意する必要があります。ですが、動画の場合はDVDに焼いて提出することもできます。音声の場合は裁判所によって対応が異なります。音声をCDに焼いて提出できるところもあれば、反訳(はんやく:音声の内容を書き起こすこと)して提出する必要がある裁判所もあります」。
――筆者の体験談と話すと、裁判所は証拠の提出の仕方は教えてくれても、その証拠がどれほど重要で、どの証拠を出せばいいかという相談は受け付けてくれませんでした。裁判所は中立の立場なので、当然といえば当然ですが。証拠の提出が難しかったです。
「一般の方には難しいかもしれませんね。ですが、言ってしまえば基本的に証拠は何でも出せます。出してはいけないというルールは基本的にありません。ただ、証拠として価値がないものを出したところで裁判が有利になるわけではありません(笑)。証拠は足りないと困る。証拠として関係ないものは裁判官が見ないだけ。基本的に出せる証拠は出した方がいいです」。
■裁判の手続きを終えて、裁判当日を迎えるまでにやるべきことは?
「裁判の手続きの際に出せなかった、追加の証拠があれば提出します。裁判所を通して被告から答弁書が送られてくるので、それに対してさらに補強したい主張や証拠があれば提出します。
また、被告の答弁書や答弁書に対する原告の再反論についてですが…一般の方は何か言われると、言い返したくなる方が多い(笑)。たとえば「お金を返して」という原告の訴えに対し、被告が「いやでも前にこのようなことがあったよね」と、関係のない答弁書を送ってきたとします。すると原告は「いやでもそれは○○で…」と、元の「お金を返して」という訴えから、どんどん関係のない主張を繰り広げる可能性があります。関係のない主張は放置してもいいのですが、ついお互いに熱くなってしまうことがあるかもしれません」。
■裁判当日はどのようなことをするのですか?
「原告と被告が両者いる場で、裁判官が「原告が提出した訴状の主張の通りで、原告側はいいですね?」という確認をします。そのあと被告に対し「この答弁書の主張の通りで、被告はいいですね?」という確認をします。少額訴訟は一回だけの裁判なので、そのあと裁判官より「このほか言い足りないことはありますか?」という確認をしてくれることもあります。被告に「原告が提出した証拠は受け取っていますか?」という確認もします。
そしてなにより被告に「原告の主張を認めますか?認めませんか?」という確認をします。このとき、お互いに争いがない(原告の主張を被告が認めている)場合は、原告の主張前提で裁判を進めていきます。お互いに争いがある場合は、証拠調べに移ります」。