ペアリング後の操作も、驚くほど簡単だ。便宜上“操作”と書いたが、むしろ何もする必要はない。ユーザーがAirPodsを耳に入れれば、自動的に電源がオンになり、iPhone本体のスピーカーからは音が出なくなる。この状態で音楽を再生したり、電話をかけたりすれば、自動的に音声はAirPodsを介して流れるようになる。直感的を通り越して、ユーザーが何もする必要がないのはお見事だ。
耳に差し込むだけで、自動的に電源がオンになり、iPhoneとつながる
一方で、音楽再生に関して言えば、操作用のボタンがないのは弱点になる。後述するようにSiriを利用すれば、再生や曲送り、音量調整など一連の操作をすることは可能だが、逆に言えば、すべてを音声でコントロールしなければならず、ボタンを押すだけという手軽さがない。気に入らない曲があったときにも、わざわざSiriを起動し、「次の曲」などと発声しなければならず、時間もかかる。
AirPodsには、ダブルタップでSiriを起動する操作が割り当てられているが、主な用途が音楽再生の場合は、これを変更しておいた方がいいだろう。設定は、iPhone側の「設定アプリ」を開き、「Bluetooth」の中にある「AirPods」で行う。ここで、ダブルタップを「再生/一時停止」に変えることが可能だ。ただし、それでも曲送りや音量調整などはできない。トリプルタップやスワイプなどに、それぞれの機能を割り当てられないのは少々残念だ。
音質はいいが、同価格帯のイヤホンと比べると劣るところも
イヤホンとしての音質も、クセがなく、低音、高音ともにきれいに聞こえてくる。期待値がそれほど高くなかっただけに、ここはいい意味では期待を裏切られた格好だ。ただし、通常のイヤホンとは異なり、AirPodsでは、イヤーピースを交換することができない。筆者の耳にはある程度フィットしたが、そうでない人も中にはいるだろう。軽くハマるため、着け心地はいいが、音漏れは気になるところだ。
音質はまずまず。イヤーピースを変えられないため、人によってはきっちりフィットしないかもしれない
とは言え、AirPodsの価格は税別で1万6800円。同じお金を出せば、有線のイヤホンだとノイズキャンセリングに対応していたり、ハイレゾ再生に対応していたりと、「音」に対する付加価値がついてくる。それら同価格帯のイヤホンと比べたときに、音がいいかというと正直なところ微妙と言わざるをえない。絶対値の評価としてはいいが、価格を加味した相対評価での音質は他の製品にリードを許している印象を受ける。
その意味で、AirPodsはほかにはない操作性のよさや、Bluetoothによる取り回しのよさなどを評価して買う製品だ。パラメーターを音質だけでなく、操作性や携帯性などに割り振った製品とも言い換えることができる。プラスして述べておくと、筆者はAirPodsの真価は、Siriとの連携にあるとも考えている。単純に音質や使い勝手だけではなく、iPhoneをハンズフリーで操作するための拡張デバイスと捉えれば、1万6800円という価格も決して割高には感じないだろう。
ジャンルとしては、本レビューでも過去に掲載した「Xperia Ear」や、UQ mobileが販売する「APlay」に近い、ヒアラブル製品として分類することができるというわけだ。ここからは、そのスマートぶりを見ていきたい。