俳優・西島秀俊やビートたけしも夢中になっているのが「数学」。どちらも大学の工学部にいた経験があり、理系出身というからうなずける。しかし、大人になった今でも空いた時間に問題を解くなど、趣味同然というのは興味深い。確かに昔から、計算は脳のボケ防止にいいといわれてはいるものの、多くの人にとって「数学が趣味」というのは少々違和感があるだろう。しかし、実際数学はハマると楽しくて仕方がなく、趣味以上の達成感があるのだという。そこで、数学がもたらす効果を紹介しよう。
■数学を解くとドーパミンが出る?!
ビートたけしらが、空き時間にわざわざ数学をやるのは、そこに何かしらの楽しみがあるからに違いない。そして、実際、数学者たちは難問を解きながら脳からドーパミンを出して、快感を得ることによって、意欲が向上し、快活な生活を手に入れているといわれている。人は、何か問題が起きたときや、目の前に難しい数学の問題などが提示されたとき、それに頭を悩ませて、なんとか達成する。すると、その達成感と共に、脳からドーパミンという快感物質が出ることで、幸福感を感じることができるのだという。
数学者・茂木健一郎氏によれば、ドーパミンは全力で取り組んだ結果、やっとの思いで達成できたときに初めて出るのだそうだ。時間制限をつけて、タイムプレッシャーを与えることで効果があるという。よって、難しい問題であればあるほど、ドーパミンは多く放出され、幸福度が高まるというわけだ。まず、このドーパミンが出ることによる快感・幸福感を味わうことで、生活全般に意欲が出るというメリットがあることが分かる。
■単純な計算で前頭前野が活性化
一方、脳の老化や衰えを予防し、より脳を活性化させるための手段としては、難しい問題を解くよりも、むしろ簡単な足し算や引き算などの計算のほうが効果的だといわれている。MRIを用いた脳の観察実験によれば、最も脳のあらゆる部位を活性化するのは、単純な計算をしたり、文章を読んだりすることだと分かっている。実験では、左右両側の半球にある前頭前野を中心に成果が見られたという。
一方、じっと考えているときには、前頭葉の一部のみ強い活性化が見られたという。つまり、単純な計算は、じっくりと考えるような問題よりも、脳が広範囲に活性化されやすいというわけだ。実際、脳科学専門の川島教授は、音読と計算によって認知症が改善されたという研究結果を発表している。