【テーマ2】部下や後輩の育て方
《相手をほめてはいけない、叱ってもいけない》
アドラーは「叱る」ことも「怒る」ことも、決してやってはいけないこととして否定する。「部下が失敗した時は、叱らずに、そのことだけを注意すれば事足ります」(岸見さん)
◎ほめるという行為は相手を見下している
上司や先輩との人間関係のあり方は、そのまま、部下や後輩との人間関係にも重なってくる。後輩とのつきあい方、育て方もまた、職場では悩みの種だ。
「対人関係はヨコ関係なので、怒ってはいけない、と言いましたよね? こう言うと、『怒ってるんじゃない、叱ってるんだ』と反論する方がいますが、この2つに違いはありません。もし、あなたが部下を叱り続けているとしたら、きっとその部下は、叱られないために、自分に与えられた必要最低限のことしかしなくなるでしょう。『指示待ち族』の誕生です」
岸見さんは、部下が失敗した際は、次の3つの対応を取るべきだという。
(1)可能な限りの原状回復。
(2)関係者への謝罪。
(3)同じ失敗をしないよう話し合う。
叱っても、何も解決しないのだ。
では、部下はほめればいい?
「そうではありません。アドラーはほめることも否定します。なぜなら、ほめることは、〝上から目線〟で相手を見下し、評価しているということだからです」
岸見さんは「ほめる」ことで、相手をダメにしてしまう恐れがあると説く。
「アドラー心理学では、承認欲求を否定します。なぜなら、承認欲求にとらわれた――つまりほめられたい人間は、他人から認められたいと願うあまり、いつの間にか、自分の人生を見失ってしまうからです。『ほめられたい=承認されたい』という欲求は尽きることがありません」
会社には、上司の鵜(もしくはポチ)のような人間がたくさんいる。彼らは、自分の承認欲求を上司に利用され、コントロール下に置かれているのだ。
ほめてもダメ、叱ってもダメ。ならば、どう部下に接すればいいのか。
岸見さんは、「部下を尊敬すること」だと言う。
「冷静に部下を観察してください。きっと、『自分より秀でた分野』を持っているはずです。その部分を認め、何なら教えを請うてもいいのでは?」
上司が部下をコントロールする場合、相手の「ほめられたい」という承認欲求を利用していることが多い。
◆アドラー心理学的3つの教訓
一、 叱り続けた部下は「指示待ち族」になる
一、 承認欲求にとらわれると利用される危険性
一、 部下や後輩の尊敬できる部分も見つける