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JALの客室乗務員訓練で学ぶ感知力と人間力

2017.01.27

シーン4・カートの操作方法

 カートを使った実技。カートはハーフとフルの2つのサイズがあるが、今回は食事のトレイが28枚入るフルカートで。フルカートは長さがあり一人で操作する場合、乗客の足が通路に出ていても見えないので、声掛けしながら慎重に押していく。また、ギャレーから出るとき、化粧室に行く乗客とぶつかることもあるので左右を確認する。カートを転回するときは必ず自分の体をカートに付けて回すようにする。

JALの客室乗務員訓練を体験!キャビンアテンダントに学ぶ「感知力・人間力」

 カートはフルに物が入っていると50~60kgぐらいの重量があり、二人でも運べるように扉開きだが、一人のときは必ず前方を閉めて飛び出さないようにしておく。フット操作で赤がブレーキのストッパー、グリーンがストッパーのリリース。航行中の機内は常に少し傾斜しているのでカートを止めたら必ずストッパーをかける。カート幅は通路ぎりぎりで、押していると本当に前方が見えにくい。前方確認に夢中になっていると池田さんから「動かしながらもお客様には笑顔でお声掛けを」と指示が出るが、通路前方の確認、笑顔、声掛けを同時に行うのは困難極まりない……。

JALの客室乗務員訓練を体験!キャビンアテンダントに学ぶ「感知力・人間力」

 こうして散々な結果に終わった4つの実技の体験は終了し、インストラクターの池田さんから笑顔で労いの言葉をかけていただいた。

 池田さんが教える上で最も大切にしているのは、必ず理由づけをして説明するということ。客室乗務員は膨大なマニュアルを覚える必要があるが、理由が明確になるとマニュアルの根底にあるものが理解でき、マニュアルにないことが起きても、自分で考え正しい行動を選択することができるようになり、ひとつのことから5も10も応用が効くようになるという。

「インストラクターは訓練中に訓練生によく問い掛けをします。私たちが想定しているものと違う答えが訓練生から来ることもありますが、それを頭から否定するのではなく、どうしてそのように思ったのか問い掛けを重ねることによって、日ごろから考える習慣がつくようになります。例えばグラスをわしづかみにしてしまった場合、頭からダメでしょうと言うのではなく、お客様に丁寧な印象を与えられない、グラスに指紋がついてしまうといった理由を明確にすると訓練生も納得できるのです。

 個人差はもちろんあるので、身体が動くのが得意な人、覚えるのが早い人とさまざまです。ペーパーテストはいつも満点に近い点数なのにモックアップでは動くのが苦手で、知識が行動につながらず苦労する訓練生も実際には少なくありません。でも時間がかかった人は時間がかかった分努力をするので決して無駄ではないと伝えます。要領よくテキパキと動ける人が羨ましく見えるかもしれませんが、努力の過程が絶対に自分の成長につながるので、時間がかかる人なりの努力をすればいいと言っています。

 国内線新人訓練は2カ月弱、国際線移行訓練は1か月ほどで、この期間にすべてを身につけるのはやはり難しいと思います。訓練をきっかけにして、その後の乗務においても、日常生活においても、日々自分の感性や接客スキルを磨いていくことが大切です。

 訓練中は試験も多いですし、日々新しいことを学ぶため苦労も多く、訓練生の中でも落ち込んでしまう人は少なからずいます。訓練自体は厳しいですが、それは優しさからくる厳しさであり、ただ怖いだけではなく、訓練生自身の成長につながる指導育成を心掛けています」

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