■日本のハローキティ現象に似ている
もう一つの面白い解釈は、まさに「なぐさめ」というキーワードだ。韓国でも深刻な長期不況と就職難、社会的葛藤が続いている。それに悩まされる若い層は、なぐさめてくれる存在が必要なのだが、すべてを抱え込めるようなライアンが、その役割を果たしているというワケだ。実際にライアンは、友達であるチューブ(アヒル)とジェイージー(モグラ)の世話をしている。
このようなライアンに対するブームは、かつて日本でブームを起こした、ハローキティの人気とも似ている。所得水準は高いが、景気低迷や過熱競争に苦しめられた団塊ジュニア世代が、やはり無表情な顔に口のないハロー・キティに沸きかえったことに似ているというワケだ。
音声から文字へ、文字からイメージへ……自分の感情を表現することが大好きな、若い世代に起きたこのような社会現象は、単に可愛いキャラクターあるいは人形以上の意味があるというものだ。そしていつもそばに置きたいという、心理状態の表れだろう。その背景と解釈がどうあれ、一つのキャラクターが日常に疲れきった多くの人たちに慰めと楽しみを与えられるなら、それは本当にありがたいことではないだろうか。
[Information]
■カカオトーク (Kakao Talk)
2010年にサービスを開始したグローバルモバイル・インスタントメッセンジャー。韓国第2のインターネット・ポータル会社のDAUMが2014年、カカオトークを買収し、2015年から社名をカカオに変更してサービスしている。カカオは、チャットアプリであるカカオトークのほかにも写真共有サービスであるカカオストーリーなど、多様なサービスを提供している。現在、韓国で最も多くの人が利用する、代表的なメッセンジャーアプリである。
http://www.kakao.co.jp
■カカオフレンズ (Kakao Friends)
カカオトークのメッセンジャーサービスを、誰もが楽しく気軽に使えるよう作られたキャラクターだ。スタンプサービスが人気を集め、キャラクター商品領域まで拡大された。2014年から韓国の主要百貨店にアンテナストアが開設され、現在は公式売場だけでなく、さまざまな企業とのコラボレーションで、事業が拡大されている。
https://www.kakaofriends.com/en/character
取材・文/劉昊相(YOU HOSANG)
韓国出身。見知らぬ場所や文化を楽しむ、生まれついての旅行家。イギリス在住時に様々なプロジェクトを経験、Panasonicなど多国的企業での海外業務経験を持ち、英語、日本語、韓国語に通じる。旅行 コミュニティー「Club Terranova」を運営。