全くのローテクだけれども、リアシートの背もたれの角度調節もコロンブスの卵のような簡単な金具だけで実現していて小気味いい。『MINI』『ビートル』『ルノー4CV』『ルノー5』『シトロエン2CV』『フィアット500』『カローラ』『シビック』など、自動車の歴史に残る優れたコンパクトカー、大衆車と呼ばれるクルマたちからは必ず開発者たちの強い信念が伺えてくる。
もちろん、クルマだからそれぞれに機械的な短所もある。しかし、信念が深いものであればあるほど、短所を超越した魅力が備わってくる。新型『トゥインゴ』を運転していると、それらのクルマから受けるのと同じようなオーラを感じる。そのオーラの正体とは、開発者たちへの共感ではないだろうか。
前輪駆動が当たり前になっている時代に、あえてリアエンジンに挑戦した心意気とその出来栄えの素晴らしさに大きな拍手を送りたい。これまでのフランスのベーシックカーは操作部分にプラスチック部品をマゾヒスティックなまでに多用していたけれども、最近ではグローバル化の価値観も取り入れたようで、運転中に必ず触れるハンドルやシフトレバーなどにはタッチに優れた革を採用している。世の中の変化をちゃんと見ていて、それを臨機応変に採用する柔軟な姿勢を持っている。