旅先での楽しみのひとつが食事。特産に舌鼓を打ち、甘いスイーツとの出会いにほほを緩める至福の時だ。
しかし、未知というのは怖いもの。いたずら好きの女神に、旅の達人もすっかり騙されたという。
■勇気を持って珍味に挑むも限界が…
台北市内のあちこちを案内してくれた、台湾の友達である、チェンとパティが立ち止まったのは、ミルクティーを売っている、雰囲気のある屋台だった。彼女たちは、笑みを浮かべつつ話しかけてきた。
「ここではコレを、必ず食べないと!」
彼女たちの説明によると、台北ではカエルの卵を入れたスイーツが一番人気だという。
「えっ? カエルの卵???」
一瞬ドキッとしたが、経験することは一番の美徳だ、と常々思っている私ではないか! そうだ、食わず嫌いはやめよう。しかし、何が何でもカエルの卵はちょっと…
「少し味わうくらいでいいよー」という私の“弱気な”提案を、チェンはきっぱり断り、3杯買って1つずつを手渡しした。
太いストローでひと口ちょびっと吸ってみると、ぬるぬるした黒い固まりが、ずるずると上がってくる。げっ…そうでなくても味気のしないミルクティーに、なんてことをするんだ…。
正直、すぐさま投げ捨てたかったが、彼女たちの気持ちを考えると、ちょっとずつでも飲むしかなかった。結局は半分すら飲めず、飲みほずなんて到底耐えられない。ストローをくわえて飲むふりを時々しながら、彼女たちがよそ見して気を取られている隙に、近くにあった大きなゴミ箱へこっそり捨て、“証拠隠滅”に成功した。