■連載/阿部純子のトレンド探検隊
◆年々増加する墓の無縁化を避けるためにも考えたい「墓じまい」
2010 年に日本初のインターネット墓石店としてオープンし、60万円、80万円、120万円とわかりやすい3プライスで、36種類のデザインと24種類の石を組み合わせてセミオーダーの墓を選ぶことができると反響を呼んだ「お墓まごころ価格.com」。今年4月からスタートした同社の新規事業が「墓じまいまごころパック」だ。
核家族化、地方の過疎化などで急激に進む墓の無縁化がここ数年クローズアップされており、子供や孫に負担を掛けたくない、墓を管理する人がいないなど、墓じまいの希望者が増加している。しかし、墓じまいには一定の手続きを経て無縁認定をしたうえで墓石の撤去、遺骨の取り出しをしなくてはならない。墓じまいの手続きは以下のようになる。
1・遺骨の移転先の確保
2・移転先から受入証明書を発行してもらう
3・現在の墓がある場所(移転元)から埋蔵証明書を発行してもらう
4・墓のある市区町村に改葬許可申請書、受入証明書、埋蔵証明書を提出し、改葬許可証を発行してもらう
5・閉眼供養(お性根抜き、魂抜き)を行ない遺骨を取り出す
6・墓石の解体撤去作業を行う
7・移転先へ納骨
このように各施設や行政で証明書を取り、解体業者や僧侶に依頼するなど煩雑な手続きや作業が必要になってくる。こうした手続きを一括して代行し、墓じまい後のフォローまでセットにしたものが「墓じまいまごころパック」で、税抜36万8000円(墓の敷地が5m2以内)で提供する。
まごころ価格ドットコム代表取締役社長の石井 靖さんに新サービスについて伺った。石井社長は19歳で墓石店に入社し26歳で独立。墓づくりに携わって35年、9000組以上の家族に墓を引き渡してきた。2010年に業界初のインターネットを使った墓石のカタログ販売をスタート。現在までに3万件以上の墓づくりの実績があり、業界で唯一の全国47都道府県すべてに墓を建てた経験を持つ。
「正式な手続きを経て無縁認定をした件数は10年前に比べると倍になっているといわれている。墓地継承者がいない無縁墓になっていながら手続きがされていないケースはさらに多いとみており、お墓の無縁化は社会問題となっている。私は墓を建てる仕事に36年間携わってきて、日本人の情操教育、社会的道徳の観点からもお墓はとても大切なものであると考えていた。それを簡単に閉めるとは何事だと最初は思っていたが、お墓が撤去され、ご遺骨を無縁塚に入れてしまうケースがさらに多くなると予想され、放っておけない問題だと感じるようになった。
終活されている方やお墓を守ってきた方が、子孫に負担を残さず、無縁化を避けるために、葛藤がありながらも、墓じまいを決断なさるというのはとても大変なことだ。罪悪感を超えて実行されるのは、かえって先祖や故人を大切にしている証ではないかと。だったら我々のようなお墓を建てるプロが手厚く墓じまいをお手伝いさせていただこうと今回新サービスを立ち上げた。墓じまいまごころパックのサービス内容については完全にオリジナルで業界初。業界からも初の試みとして注目されている」
「墓じまいまごころパック」は面倒な手続きの代行のほか、3プライス事業で培った北海道から沖縄まで全国の業者のネットワークを生かして、散骨や墓の解体業者など個々の事情に合わせて対応できるので、地方で墓じまいをして東京に遺骨を持っていきたいという場合でも、個別に業者を頼まずとも一括ですべてを手配できるのが強みだ。また、遺骨の移転先は同社が提携している宗教法人が受け入れることも可能。檀家でない人向けに、オプションで閉眼供養の法要に僧侶を派遣することもできる。