【「書きたいという本能を刺激するのが手帳です」『趣味の文具箱』編集長・清水茂樹さん】
誰もがスマホやPCを持ち歩き、スケジュール管理やメモなど機能的には手帳はなくても全く問題ない時代だ。それにもかかわらず、手帳人気は過熱する一方。その理由はどこにあるのか……達人に聞いて見えた答えとは?
◎書きたいという想いを満たす一冊を求めて
近年の手帳ブームは、2008年に起きたリーマン・ショックが発端と清水茂樹さんはいう。
「コストカットにより会社から手帳が支給されなくなったのです。そうなると、個人で買うしかないから、お気に入りの手帳を探すようになる。結果、個人需要を満足させるべく、様々な手帳が登場し始めました」
編集長らしく、そう市場分析したあと、でもね……と手帳に対する自身の想いを語ってた。
「人には“筆欲”というものがあると思っているんです。人がペンを持つ行為は、(1)誰かに伝える(手紙、伝言)、(2)自分に伝える(スケジュール、日記)、(3)“強制されない”ラクガキや書道のような趣味などの精神的な行為に分類されます。筆欲とは、この3番目の先にある純粋に書きたい! というヒト特有の知的な本能だと考えています」
それを証明するように、清水さんは4つも手帳を所持。それぞれに選んだ理由と使い続ける理由があるのだ。それらを見せつつ、紙の質感やフォーマットの美しさを語ってくれた。
「好みは人によって千差万別だと思いますが、筆欲の赴くまま、日々寄り添って書き込みたくなるような手帳を探すのも楽しみのひとつだと思います。上質感があって、書き込みたくなる佇まいが僕の理想ですが、次々に新製品が登場……自分もまだ探している途中です(笑)」
枻出版社『趣味の文具箱』編集長 清水茂樹さん
1965年、福島生まれ。年4回発行する文具専門雑誌を通し、その魅力を世に伝える。根っからの文房具好きゆえ、周りからは公私混同、職権乱用と言われることもあるという……。