■連載/カーツさとうの最強サウナ熱伝
昔っから“ひきはじめの風邪はサウナで治る”と、ヨーロッパでは言われてる。この話を最初に知ったのは、もう40年近く前、当時読んでた雑誌の『ポパイ』でだった。多分、縦割りでレイアウトされた“pop*eye”(一部の人には懐かしいでしょ?)っていうコラムページかなんかだったと思う。
その頃ポパイに書かれてたことは、中学生だったオレにとってはなんでも「ナウだな〜」だったし、なにしろ40年前といえば、風邪をひいたら風呂にも入っちゃいけないと言われてた時代。ナウだわ、常識破りだわ、というダブルインパクトで今でもズーッとその記事の内容を覚えてた。
で、この歳になってサウナが好きになってからも、ずっとあの記事は本当なのか? と思い続けてた。“サウナ・スパ健康アドバイザー”の資格を取った後も、色々気になってネットで調べたりしたんだけど、“治る”って意見もあれば“治らない”という意見もあるし、だいたい“自分で試してみました”っていう体験談は一個も発見できなかった。
これはオレがいつか体験してみなきゃな〜と思ってはいたんだが、ついにそれを試せる時がきた! 風邪のひきはじめってヤツになったのである。これは、そのオレの体を使った事実の記録である。
正月のまだ松の内の5日。近所の本屋で立ち読みをしていると突然、ブルッとした寒けが体を襲う。この日は1月だというのに季節外れの暖かい日。それも暖房の効いたショッピングモールの中の本屋でだ。
「こりゃ風邪だな…」
さすがに50年以上生きてくると、ちょっとした体調の変化がその後の自分にどんな影響を及ぼすかがなんとなくわかってる。そして例の“ひきはじめの風邪はサウナで治る”って話が脳裏に浮かぶ。
買いたい本の会計をすますと、もうその足で前から行きたいと思っていたサウナ付き銭湯『T湯(仮名)』にバスで20分かけて辿りついた。バスに乗ってる最中も寒けは消えなかった。普通だったら“マジに風邪だよ、ヤベェな”と思うところだが、この時ばっかりは“マジに風邪だよ、やったぜ!”と、自分で人体実験できる幸運に感謝していた。
川崎の高津区にある『T湯』。サウナ室は銭湯によくあるパターンの赤外線サウナ。温度は室内の温度計で100度ちょうど。1セット目は5分の砂時計2回分の都合10分入る。10分たった頃には、すでにさっきまで感じてた寒けはまるでなくなっていた。効きそうな気がビンビンしている。
『T湯』には冷泉掛け流しという、サウナーにとってはオシッコ漏れそうにありがたい水風呂がある。水温は体感で20度ちょいくらいとヌル目だけれど、風邪なんだからそのくらいが一番いいんじゃねェか? とポジティブにとらえ2分ほど浸かったんだけど、いや〜やっぱり冷泉の水風呂はイイ!! 体全体を優しく包み込む、羊水にも似た軟らかさがあって、しばし悦楽の時を過ごしてから休憩。
すると、サウナ→水風呂→休憩というセットの中の、この休憩時にいつも感じる、水風呂で一度冷えた体を自らガンガン暖めてようとしている、あの生命力湧き出る感じがいつも以上に強力に実感できる。なにか体内で風邪の菌とオレの免疫が強烈なバトルを繰り広げているのがわかる!