生成AIの急速な進化によって、従来型のSaaSビジネスの価値や役割が変化する「SaaSの死」という言葉がニュースなどでも取り上げられる機会が増えている。デジタルエコノミー特化のカスタマーサクセス・プロバイダーのアディッシュは、SaaSの現在地を把握するために、SaaSの開発・提供企業と販売代理・導入支援企業の決裁者・担当者に『SaaSに関する意識・実態調査』を実施して結果を公開した。それによればAIを脅威としてのみ捉えているのではなく、AIを取り込んでSaaSが新たな形へ進化するフェーズに移行し始めていた。
AIによるSaaSの代替は7割以上が「影響あり」と回答
AIによるSaaSの代替(いわゆる「SaaSの死」)という見解に対して「部分的な脅威」だと回答したのは43.6%で最多だった。「重大な脅威」(29.6%)と合わせると7割以上が影響を自覚していた。「自社の事業を成長させる機会」と前向きに捉える回答も16.2%で、「影響なし」はわずか5.1%だった。「影響なし」が少なく、多くの企業がAIによるSaaSビジネスへの影響を実感していた。
AIの台頭に対して約8割がすでに対応
AIの台頭に対する対応状況は、「部分的な対応」(48.9%)と「根本的な転換」(30.2%)を合わせた約8割が対応に着手していた。「議論・検討中」は10.9%、「静観・様子見」は4.4%と低かった。AI時代の到来で市場の変化に適応することは、SaaS業界全体の「前提」になっているようだ。
「AI SaaS」化の実装は過半数近くが対応
開発・提供(または支援)するSaaSのAI化の状況は、人間の業務をサポートするAI機能を部分的に追加している「支援型AI SaaS」は半数以上が対応していた。AIが自律的に業務を完遂・遂行できるレベルで実装されるAIエージェント/BPaaS化である「自律型AI SaaS」も41.3%が対応していた。この結果は複数回答だが、半数以上の企業が既存機能への「AI導入(支援型)」と「自律型(AIエージェント)」が開発済みだった。「開発・テスト中」の企業も30.9%で、今後も「AI SaaS」は広がっていきそうだ。
「AIアシスタント型」と「BPaaS型」の二極化が進む
AI時代にSaaSが生き残るための提供形式は、人間を主役にして既存サービスにAIを組み込む「AIアシスタント型」(28.4%)が最多だった。それに「AIのためのインフラ化」(23.1%)、「AIによる業務代行(BPaaS型)」(22.9%)が続いた。すでに約半数が支援型や自律型のAIを実装済みという結果だったが、将来の提供形式には「外部AI連携」(11.3%)なども選択肢に挙がっていた。
AIによる環境変化の打開策は独自データの蓄積と活用
事業上の差別化のための打開策は、業界特化や顧客データの蓄積などによる「独自データの囲い込み」(44.7%)が最多だった。AIを前提としてUI/UXを極限まで削ぎ落とす「AIファースト化」(40.7%)やハルシネーション対策を徹底する「信頼性とガバナンスの追求」(33.6%)なども上位になった。汎用AIがアクセスできない、自社しか持ち得ない独自データの蓄積と活用が差別化につながると考えられていた。
カスタマーサクセスでは「人」による関与がカギ
自社が提供するサービスなどで、顧客が期待する成功体験を支援するカスタマーサクセスもAIの導入は不可欠になっている。AI化に伴うカスタマーサクセスのあり方では、「高度なコンサル化」が31.8%で最多だった。それに「AI自動化による人員縮小」(27.8%)、「人間ならではの伴走・感情価値の向上」(22.0%)が続いた。AIによる定型業務の自動化や効率化は進みそうだが、1位の「高度なコンサル化」と3位の「伴走・感情価値向上」は「人」による関与が想定でき、それが半数以上の回答になっている。SaaSの活用は、人が課題解決に伴走する「人の介在価値」も重要になるとみられる。
AIの台頭に伴う「SaaSの死」という見解に脅威や影響を感じる人は多そうだが、SaaS自体が消滅するのではなく「AIとの共存による進化のフェーズ」と捉えている人も存在した。AI時代に独自の価値を創出していくためには、「独自データの蓄積・活用」、「AIを前提としたサービスの再構築」、「人の介在価値の高度化(カスタマーサクセスのコンサル化)」の3つが重要といえる。テクノロジー(AI)と人(データ活用・伴走力)の双方を駆使して、SaaSを信頼性の高い独自の付加価値に昇華できるかが、AIで急激に変化するビジネス環境を乗り越える打開策になりそうだ。
『SaaSに関する調査』概要
調査対象者:「自社でSaaSを開発・提供している企業にお勤めの方」および「他社SaaSの販売代理や導入支援をされている企業にお勤めの方」の中から次に該当する人
・最終的な決裁権を持っている
・決裁者として共同で判断する立場
・評価・選定に関与し、決裁者へ提案する立場。情報収集や現場での実行に関与している人
調査期間:2026年7月14日
スクリーニング調査実施数:10000
本調査実施数:1090
有効回答数:450
調査方法:インターネット調査
https://www.adish.co.jp/news/20260924_cs/
構成/KUMU




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