ディスカウントストア「ドン·キホーテ」を運営するパン·パシフィック·インターナショナルホールディングス(PPIH)が、10月1日に民事再生手続き中の日本トイザらスとスポンサー契約を締結しました。日本トイザらスの店舗などを事業譲渡によって譲り受ける予定です。
総合スーパー「アピタ」やディスカウントストア「Olympic」を買収してきたPPIHが、トイザらスを取得する狙いはどこにあるのでしょうか。
ドンキ傘下で「おもちゃ屋」から「アソビ業態」へ
日本トイザらスは2025年12月期に37億5900万円の純損失を計上していました。2024年12月期は19億4800万円の最終赤字。赤字幅が大きく広がっています。
日本玩具協会によると、2025年度の日本の玩具市場規模は前年度比6.3%増の1兆1664億円でした。一方、日本トイザらスは2025年12月期に売上高は7.0%減少しています。
足元で玩具市場をけん引しているのは、「トレーディングカード」やプラモデルなどの「ホビー」が中心。
大人も楽しめる玩具が人気で、子どもと大人を掛け合わせた「キダルト」が消費のトレンドになっています。トイザらスは2025年からキダルト向けの売場づくりを強化したものの、乗り遅れた印象があります。
買収するPPIHは、IP·キダルト商材などを強化し、「おもちゃ屋」から「アソビ業態」へと再定義する計画を立ち上げました。
トイザらスは圧倒的な品揃えで、日本に進出した際は黒船と恐れられたほど。メーカーから直接大量に仕入れ、安く販売するというビジネスモデルで小売革命を起こしました。
しかし、ECが台頭するとその強みが発揮できなくなりました。更に家電量販店などが玩具の品揃えを強化するようになると、玩具専門店の魅力が失われてしまいます。
専門店ならではの品揃えやイベント、独自企画商品などで顧客が店に足を運ぶ理由を作らなければなりませんでしたが、トイザらスは従来のビジネスモデルから大きく転換することができませんでした。
東京商工リサーチは、「値引き販売による利益率の低下から設備資金が捻出できず、競争力が低下する悪循環に陥った」と報じています。
「ロビン·フッド」出店強化の裏に総菜製造会社の買収あり
PPIHはM&Aを繰り返して会社を成長させてきました。戦略性に一貫があり、分かりやすいことも特徴の一つ。しかし、トイザらスの買収は、これまでの流れからはやや外れているように見えるところに面白さがあります。
近年のM&Aを、順を追って説明します。
会社が大きく変化したのが、2019年に完全子会社化したユニーでした。ユニーは総合スーパー「アピタ」や、地域密着型のスーパー「ピアゴ」などを展開しています。
買収前の「ドン·キホーテ」は、日用品などの非食品の品揃えが圧倒的でした。ユニーを買収することによって、食品·生鮮食料品を強化することができたのです。
若者の集客力が強かったPPIHは、ユニーを取得することによってファミリー層にもリーチすることができました。顧客基盤が拡大したのです。
その効果は、PPIHの「majica」の会員数によく表れています。PPIHは出資をしていた2018年からユニーの店舗をドンキとダブルネーム店へと転換していましたが、2017年6月末に527万人だった会員数は2019年6月末に816万人を突破。
アピタ·ピアゴ全店で利用を開始した2020年6月末には1069万人となりました。年間の増加人数は前年の約1.8倍に拡大しています。
PPIHは食品部門の更なる強化を図りました。
2019年にグループ化していた総菜製造のかね美を2025年に連結子会社化したのです。
共働き世帯や高齢世帯の増加などにより、総菜の需要は膨らんでいます。日本総菜協会によると、2025年の市場規模は前年比3.7%増の11兆7075億円でした。
PPIHは食品·生鮮·総菜を主軸とした「ロビン·フッド」の1号店を2026年4月にオープンしています。2035年までに200~300店舗体制を構築する計画。PPIHは、M&Aによって強化した食品部門が、足元の成長戦略を支えているのです。
なぜ業績不振のOlympicを買収したのか?
PPIHは2026年にディスカウントストア運営のOlympicグループを完全子会社化しています。Olympicは業績が低迷気味の会社ですが、展開する店舗の約3分の2が東京都内にあります。PPIHが出店しているエリアとの被りが少ないのです。
この買収は店舗ネットワークを取得するという意味合いが強く、PPIHは98店舗を立地に応じた業態に転換する意向を示しました。2029年10月までの完了を目指すといいます。
転換の第1弾として、「Olympic 北新宿店」をロビン·フッドに、「Olympic 高井戸店」をMEGA ドン·キホーテに転換する計画を発表しています。
PPIHは、2026年6月期の売上高が前期比8.8%増の2兆4452億円、営業利益は同7.7%増の1748億4200万円、営業利益率は7.2%と絶好調。
しかし、2027年6月期は営業利益が同2.4%の1790億円を予想しています。予想通りの着地で営業利益率は6.7%。営業利益率は2年連続で続いた7%台を下回る見込みです。
主要因になっているのが、Olympicグループへの投資。今期は50億円を見込んでいるのです。
こうしたなかでの、トイザらス買収の発表でした。
PPIHはトイザらスを買収する狙いに、玩具市場が伸びていることや、新たな顧客層を拡大できること、非食品カテゴリーの磨き込みなどを挙げています。
キダルト向けの商品展開が上手く進めば、玩具市場の旺盛な需要を拾えるようになるでしょう。専門店を持つことで、玩具メーカーと交渉しやすくなり、オリジナル商品の開発などにも弾みがつくはずです。
ユニーの買収で「majica」の会員数が急増したことを考えれば、顧客基盤が拡大することも影響は大きそう。トイザらスは、子供づれのファミリー層という明確な顧客像が浮かぶため、ドンキと併設店を設けることで従来になかったターゲットを店に呼び込むこともできる可能性があります。
気がかりなのは、Olympicグループの再建、業態転換という大仕事があるなかで、買収へと踏み切ったことです。M&Aは買収後のPMIと呼ばれる統合プロセスが重要とされており、Olympicとトイザらスを手掛けるのは容易ではないでしょう。
PPIHがこれまでのような力を発揮できるのか、次なる成長ステージに期待が集まります。
文/不破聡
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