児童の学習指導と生活指導という重責を日々担う教員。その勤務実態はどれほど過酷なものなのだろうか?
小学館が運営する教員向けWebメディア「みんなの教育技術」はこのほど、教員の勤務実態に関するアンケート調査を行い、教員、教育委員会などの関係者含め2,672人からの回答を得た。そのうち、2,560人が現役教員であることが確認された。
出勤してから退勤するまで 平均約11時間。4人に1人が12時間以上
勤務時間についての結果は上のグラフの通り、79.4%の教員が10時間以上の勤務、約4人に1人(24.3%)が12時間を超えて勤務している状況だった。平均値は約11.05時間となり、2025年調査の平均11.17時間とほぼ横ばいの水準にとどまった。ここから、法定労働時間を上回る勤務が常態化している可能性がうかがえる。
「休憩時間がほとんどとれない」人は64.6%超
1日に取得できている休憩時間について、「ほとんどとれない」と回答した人は全体の64.6%にのぼった。これに「15分未満」を加えると、この設問に答えた回答者の84.1%の人がまともな休憩を取れていない実態がわかる。
特に、1日8時間以上勤務していると回答した教員(2,610人)に絞ると、労働基準法上60分以上の休憩が必要となるが、実際に60分以上とれていた人はわずか6人(0.2%)となった。
「十分に休憩時間をとれない理由」を自由記述で尋ねたところ、業務の合間を縫って仕事を進めざるを得ないという実態が、具体的な1日の流れとともに数多く寄せられた。
約半数が週3日以上の「持ち帰り残業」
出勤前・退勤後の「持ち帰り残業」が週3日以上あると答えた教員は49.8%(1,321人)で、2025年調査の「50%超」とほぼ同水準だった。特に「ほとんど毎日」持ち帰り残業をしていると答えた教員が34.6%(917人)を占めた。
9割弱が休日にも勤務
1ヶ月のうちに休日に仕事をする日があると答えた教員は、86.4%にのぼり、2025年調査の「約9割」に近い水準を維持している。平日は、突発的な業務量の多さ、家庭の都合や疲れ果てて業務が終わらず、自分が裁量を持ちやすい休日に、教材研究や学級事務、校務分掌の仕事、などを行うという声が多く寄せられた。
時間外勤務の要因、9割弱が「そもそも8時間で終わる業務量ではない」
時間外勤務の最多の要因は「1日の業務量がそもそも8時間以内にできる設定ではないため」で86.3%となった。2025年調査(「80%以上」)よりもさらに高い水準となり、慢性的な業務過多が構造的要因であるという認識が、この1年でむしろ強まっている可能性がうかがえる。
さらに、有効回答数2,580人のうち、90%以上が複数の要因を選択しており、解決の難しさがうかがえる。自由記述では、不要な業務の多さ、人手不足の穴埋めが必要、中学校では部活で土日出勤をせざるを得ないという声が寄せられた。
保護者対応と業務量の多さが「つらい」
「勤務時間の長さ以外で、『つらい』と感じるのはどんな時ですか?」を自由記述する設問に対し、最も多く挙げられた回答は、2025年調査と同様に「保護者から理不尽なクレームを受けている時」で22.9%、次いで、「業務量の多さ」が15.7%となった。
自由記述には、体調不良の訴えや休みのとりづらさ、休暇や雇用の「制度」そのものが十分に整っていないという訴えも目立った。
文部科学省の勤務時間目標との乖離
公立学校教員の給与などについて定めた教員給与特措法(給特法)は2025年6月に改正され、これを受けて文部科学省は同年に新たな指針を公示した。
この指針では、まず2029年度(令和11年度)までに
・時間外勤務が月45時間以下の教職員の割合を100%とした上で、教員の時間外勤務を月平均約30時間まで減らす
・年間の総時間外在校等時間を360時間以下とする
を目標に掲げている。
しかし、この数値を目標としつつ、具体的な施策が学校現場に依存している結果、目標(数値)と実態に差が出てきている現状が浮き彫りになった。それを示唆する回答者からの声を一部抜粋する。
・仕事が終わってないのに、はやめの退庁を呼びかけられるとき。保護者への連絡などは、学校の電話から管理職の前で行いたい。家で自分のスマホから、保護者に連絡するときは気が滅入ってしまう。(40代・小学校教諭)
・とにかく業務量が多く、とても終えられる量ではないということ。しかしながら、校長が、月の残業時間を平均30時間100%に設定しているうえ、管理職からは、残業時間を減らすよう遠回しに言われる。また、県教委からは、働き方改革が進み、教員の残業時間削減に効果が出ているのは喜ばしいという謎の称賛が時折耳に届く。つまり、仕事を持って帰ってカウントできない残業を行え、または、タイムカードを改ざんして残業時間を減らせという指示であると受け取っている。(50代・小学校教諭)
「子どもの成長」「子どもの笑顔」が教員をつなぎとめている
一方「『これがあるから教員はやめられない!』と、思うような強い喜びを感じるのはどんな時ですか?」という問いでは、2025年調査と同様「子どもの成長やできた瞬間」や「子どもの笑顔や楽しそうな姿」など、68.1%が子ども関連のポジティブな出来事に喜びを見いだしていると回答した(回答2,203件)。
新設問で見えた、“時間” より “心” を ――情緒的疲労をめぐる本音
「残業時間を減らすより、情緒的疲労を減らしてほしい」と考える教員が60.6%にのぼった一方で、将来のデジタルツール開発に期待する方向性を尋ねると、65.3%が「情緒的疲労の軽減」よりも「生産性の向上」を選んだという、一見矛盾するような結果が出た。
これは、日々の “心” のケアを切実に求めながらも、それをかなえる具体的な手段としては、まず業務そのものを減らす・効率化することへの期待の方が現実的だと感じている、という複雑な心理を映しているとも解釈できる。
自主的に学ぶ教師はメンタルダウンに陥りにくい可能性
今回の調査では、「研修以外にも自主的に学んでいる」と回答した教員のうち、「俯瞰的に物事を見られている」と答えた割合は80.4%にのぼった。自主的な学びをしていないと回答した教員(52.6%)と比べて約28ポイントの差があり、学び続ける姿勢と物事を客観視する力との関連がうかがえる。
心理学の分野では、こうした「物事を一歩引いてみる視点(セルフディスタンシング)」を持つ人は、ネガティブな感情にとらわれにくいことが指摘されている(Kross et al., 2012;Powers & LaBar, 2018)。今回の調査結果とこれらの知見を重ねると、自ら学び続ける姿勢が、間接的にメンタルヘルスの維持にもつながっている可能性がある。
以上より、教師のメンタルダウン防止には、教師が自主的に学ぶ環境を整備することが有効であることが示唆される。
2025年から2026年にかけての1年間で、勤務時間・休憩・持ち帰り残業・休日勤務といった基本的な指標に大きな改善は見られなかった。給特法改正に基づき文部科学省が掲げる「2029年度までに時間外勤務を月平均約30時間まで減らす」という目標に対し、公的統計でも今回の独自調査でも、現状はなお大きく乖離したままだ。さらに、表向きの残業削減を目指すことで、残業実態が見えづらくなっていくリスクも見えてきた。
一方で、今回新たに見えてきたのは、教員たちが「残業時間を減らす」こと以上に「情緒的な疲労を減らしてほしい」と願っているという実態だ。給特法改正や新指針による量的な目標管理と、安心して働くための情緒的な支援を求める現場の声にどう応えるか。その両輪をどう回していくかが、今後の学校の働き方改革の鍵になるだろう。
<調査概要>
調査対象:全国47都道府県の教育関係者
調査期間:2026年5月23日~7月5日
調査機関:自社調査。Webメディア「みんなの教育技術」でのアンケート調査
有効回答数:2,672人(男性:807人、女性:1,713人、その他・無回答:152人)
回答者の年代:20代:364人、30代:620人、40代:780人、50代:684人、60代以上:180人、その他・無回答:44人
回答者の校種:小学校:2,223人、中学校:215人、特別支援学校:70人、高等学校:62人、義務教育学校:28人、教育委員会:10人、中等教育学校5人、その他・無回答:59人
出典元:みんなの教育技術
構成/こじへい




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