AIの進化や影響力の拡大でAIエコノミーがビジネスでは切り離せないものになっている。実際に多くのグローバル企業はAI導入が事業拡大の成功の要素と考えているようだ。プログラマブルな金融サービスを構築するStripeは、同社のプロダクトを利用中のAI企業の取引データを分析して、グローバル市場のAIエコノミーの現状について分析した内容を発表した。それによればAI企業が世界規模で急速に事業を拡大している現状があり、売上上位の100社は事業開始から3年目で平均120か国へ進出していたという。
売上上位100社は3年目で平均120か国へ事業展開
需要が特に高い国を世界地図上に可視化すると、Stripe上でのAI支出額の大きさは、その国のGDPと連動しているケースが多く、業種を問わず海外進出の有力な候補地になっていた。グローバル展開そのものは容易になったが、単純に海外市場に進出するだけでは収益化に繋がらない。Stripeのデータによると、売上上位100社のAI企業は、総売上の48%を自国以外の海外市場から獲得しており、持続可能なビジネスとしてグローバルな収益基盤を確立するには、各地域に合わせたプロダクトやサービスのローカライズが不可欠だという。
地理的データ分析は、現地のマーケティング活動や翻訳、最適な決済手段の導入など、どの市場へ優先的に投資すべきかを判断する際の有用な指針になるが、「AI支出の成長率が高い国」や「Stripe上の総決済金額に対するAI支出の割合が突出して高い国」などの追加の指標を掛け合わせることで、注目すべき有望な市場もわかったという。AI支出の絶対額でStripeの上位10か国に入る市場は、いずれも一般的なオンライン支出でも大規模な市場があり、グローバル貿易との結びつきが強いGDPの高い国だった。ここで注目したいのは、あまり知られていないAI高度成長市場の存在だ。AI高成長市場でStripe全体の支出に占めるAI支出の比率が突出して高い国を抽出すると、インド、メキシコ、ポーランド、アラブ首長国連邦が上位だった。日本、韓国、ブラジルの3か国は、AI支出の絶対額が高いだけでなく、Stripe上のほかのオンライン支出と比較してもAI支出の割合が際立って高い「二重の意味での上位市場」だった。
AI関連は小規模市場と成熟市場ともに大きな伸び
Stripeが決済データを保有する世界各国の全市場では、AI関連の支出は急速に拡大しており、2024年時点で2000万ドル以上のAI支出があった35か国に対象を絞って分析した場合でも前年比成長率の中央値は約100%に達したという。市場規模が上位の国・地域では、前年比成長率が中央値を下回る市場もあったが、絶対的な伸び率は高く、米国は前年比91%、オーストラリアは前年比61%と成熟した市場でも強い成長力を持続していた。
中央値を上回る高い成長率は、比較的規模の小さい新興市場に集中する傾向はあるが、すでに多額の支出が行われている成熟市場でも高い伸び率を維持している国もあったという。英国、カナダ、ドイツは高い成長率を維持しており、さらに韓国は、市場の大きさや成長率の高さ (前年比134%)、Stripe全体の決済金額に占めるAI支出比率の高さという3つの要素を兼ね備えた極めて稀有な市場だ。この背景には、安全性の確保と成長促進を両立させる2026年の「AI基本法」などの国家政策、政府主導のスタートアップ支援、日常的なAIの台頭に対して「期待よりも懸念が大きい」と回答した人の割合が世界でもっとも低いという国民性などの要因が複合的にあると考えられる。
グローバル展開の長期成長の鍵はローカライズ
世界中で高まるAI需要は、多くの企業に急速な事業拡大をもたらしているが、その代表例がAIエージェントプラットフォーム「Manus (マナス) 」だという。2025年初頭に同社の自律型AIエージェントサービスがソーシャルメディア上で話題になると、わずか1か月後には200以上の国・地域での決済受付を開始して、4か月後には年換算売上高9000万ドル (約140億円)を達成した。だが成長を持続させて自国以外の市場から確実な収益を得るためには、現地の市場環境に合わせたローカライズが不可欠だという。消費者は使い慣れた決済手段が使えないと購入をあきらめてしまう傾向があるので、進出先の国・地域に適した決済手段の導入は収益に直結する。Stripe上でもっとも急速な成長を遂げているAI企業群は、ほかの企業と比較して平均で2倍の現地決済手段を導入しており、過去の分析データでは購入時に適切な現地決済手段を提示することで、コンバージョン率が平均7.4%向上して売上が平均12%増加していたという。
AIを活用したデザインプラットフォームを提供する「Gamma」も現地決済手段の拡充は成長の要だった。インドのリアルタイム決済システム「UPI」を導入した結果、インド国内での売上が22%増加して、現在では同社の総売上の過半数を本社所在地である米国以外の海外市場が占めている。現地通貨での決済提供がサブスクリプション型AIビジネスでも初期コンバージョン率とLTV (顧客生涯価値) の双方を押し上げることも確認されており、過去の分析ではStripeの現地通貨・相場に合わせて価格を自動調整する機能「Adaptive Pricing」を活用するサブスクリプション事業で、初期コンバージョン率が平均4.7%向上、LTVが平均5.4%向上という結果も出ている。グローバル市場における事業拡大では、ローカライズは重要事項で、効率よく導入・運用するためにAI導入は不可欠になっているようだ。
構成/KUMU




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