公式Xが「想像の倍は飲みにくい。心してかかれ」とポストするほど、とにかく飲みにくい「飲むヨーグルト」がある。会津中央乳業の「会津の雪 ソフトクリーミィヨーグルト」だ。
パッケージにはご丁寧に「のみにくい」 と記載。あえてネガティヴな表現をすることでそれが商品の魅力に繋がり、1981年の販売から福島を代表するヨーグルトとして人気を博している。
ポイントはなんと言っても、地元会津産の生乳を原料に大手に真似できない製造法で仕上げた「他にはない固さと濃厚さ」。
こだわりが詰まった「のみにくい飲むヨーグルト」の開発秘話から、話題作りの秘訣について、会津中央乳業の二瓶さんに話を聞いた。
――なぜ「のみにくい」飲むヨーグルトは生まれたのでしょうか?
「大手メーカーが飲むヨーグルトを発売し始めた1970年代、弊社も開発したいと思ったのですが製造機が高額で難しかったんです。でも、どうしても作りたくて、食べるヨーグルトを作る機械で柔らかく仕上げてみようということで開発が始まりました」
そう、会津中央乳業は考えた。
『飲むヨーグルトが作れないなら、食べるヨーグルトをやわやわにして飲むヨーグルトにすればいいじゃない』
柔軟すぎる発想力と強い信念。何度も試作した結果、「のみにくい」飲むヨーグルトが完成。販売当初から、振って飲む商品として売り出したという。
――当時と比べて飲みやすくなっているんですか?
「いや、レシピも変わっていなければ作る機械も変わっていません。地元のお客様からは「この飲みにくさを変えないで」との熱烈な要望もあり、販売当時のままの味、のみにくい商品を今もお届けしています」
「ただ最近は、県外にも多く出荷するようになり、「のみにくい」「もっと飲みやすくしてほしい」との要望が今まで以上に増えたため、パッケージに“のみにくい”と表記するようにしました」

消費者に合わせて「飲みやすくする」のではなく、「のみにくい」ことを真摯に受け止めながらさらに主張するこの姿勢、嫌いじゃない。
筆者も実際に「ソフトクリーミィヨーグルト」を味わってみた。
「よく振って」とはどれぐらいなのか?
10回振って飲む。吸えない。
30回振る。ほぼ吸えない。
100回振る。まあまあ吸える。
ここで一旦諦めた。公式によると「3分ほど振るのがおすすめ」とある。
その通りに振り続けるてみると、イケた。
ようやく、ファストフードのシェイクのような絶妙すぎる吸い心地に。それと美味しい。
やさしい味わいとほどよい酸味があまり出会うことのない飲むヨーグルトだった。飲みにくいのに舌触りは飲みやすい。そんな不思議さもある。
ちなみに、振らずに中身を確認するとこの状態。ヨーグルトよりもヨーグルト然としている。
振れば振るほど飲みやすくはなるが、自分好みの固さに仕上げる楽しみもある。そして固さの違いで味わいの変化も楽しめる。
「ソフトクリーミィヨーグルト」の美味しさの秘密がもっと知りたくなった。
飲みにくいヨーグルト 早飲みの極意は根性
想像の倍は飲みにくい「ソフトクリーミィヨーグルト」。ここまで人気になった理由について二瓶さんは「SNSによるお客様の共感」と控えめに話す。
もちろんそれだけではない。
会津の誇りが詰まった美味しさこそ本当の魅力といえよう。
一般的な飲むヨーグルトは、タンク内で発酵させてから砕いてパックに詰める「前発酵」という方法で作るが、「ソフトクリーミィヨーグルト」は菌を入れてパックに詰めてから発酵させる「後発酵」という独自の製法で作っている。それが、『飲みにくい』を生み出している。
そして、素材こそ全ての美味しさの源。ヨーグルトの原料である生乳は鮮度が命。
搾乳した直後から、風味が落ちていく。
しかし、会津中央乳業は喜多方、猪苗代、磐梯など近距離の酪農家から鮮度の高い生乳が直接工場に運ばれ、鮮度を落とすことなく、真の美味しさがそのままに商品に反映される。
その結果、濃厚な口当たりとどこか懐かしくやさしい甘み、そして生乳本来のコクが生まれる。
「のみにくい」という弱点は、こだわりの製造法により「こんな美味しいヨーグルト、味わったことない」という満足感でかき消される。
そして、「のみにくい」ことがもはや楽しい体験に変わる。
『振ることで自分の好みに仕上げることで完成される美味しい飲むヨーグルト』。
ありきたりな飲むヨーグルトには真似できない思い出が心に刻まれるのだ。
さらに、「のみにくい」を逆手にとったこんなイベントも開催している。「のみにくいヨーグルト早飲み世界大会」 。
全国から100〜200人以上の応募があるというこの大会。今年は第4回大会が行われ、1分17秒の世界新記録も誕生。大盛況だったという。
早飲みのコツについて二瓶さんに伺うと一言、「根性!」。
大手メーカーが追求する飲むヨーグルトの魅力を完全無視して、独自の商品価値を徹底的に磨き上げる経営戦略。
創業から約80年。先代が牛乳店を始めた頃の風味とコクを守りながら、ほのかな甘さが口いっぱいに広がる昔ながらの牛乳やヨーグルトを作り続けてきた会津中央乳業。
今後の挑戦にも期待が高まる。
「我々は美味しいものを追求し、会津に根ざして商売をした結果、地元のお客様に愛され、生き残ることができました。その輪が少しづつ広がって支えられていると実感しています」
「これから挑戦したい商品はチーズですね。会津産の生乳の風味を活かし、発酵の技術を生かしたチーズづくりに励んでいきたいと思っております」
取材協力
会津中央乳業株式会社
会津中央乳業 公式X @aizubekotiti
文/太田ポーシャ
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