10月になると、多くの会社で下期が始まります。上期を振り返り、会社から下期の目標を渡され、それに向かって仕事をする。毎年のことだから、ある意味では当たり前の光景です。しかしながら、「目標は一応達成したけれど、自分は何が成長したのだろう?」「毎月忙しく仕事をしていたけれど、何となく半年が過ぎてしまった」という経験はないでしょうか。目標を設定することと、自分が成長することは、実は同じではありません。
下期のスタートでは、「何を達成するか」だけではなく、「どんな自分になりたいか」まで考えることが大切です。成長実感を得るための目標設定方法について識学の観点からお伝えします
1.「売上達成」だけでは、自分の成長は管理できない
例えば営業職のAさん。会社から下期の目標として、「売上1億円」を設定されました。
Aさんは、「よし、1億円を達成しよう」と毎月の売上を確認し、商談件数を増やし、既存顧客への訪問も増やしました。結果として、半年後には1億円を達成しました。
これはもちろん素晴らしい成果です。ところが、上司から、「この半年で、Aさん自身は何が成長しましたか?」と聞かれたらどうでしょう。「売上が上がりました」だけでは、自分自身の変化が見えません。そこで、目標をもう一段深く考えてみます。
例えば、成果目標「下期売上1億円」成長目標「顧客の要望を聞くだけではなく、経営課題まで踏み込んだ提案ができるようになる」行動目標「毎月3件の商談について、商談終了後に『顧客が本当に困っていることは何か』を整理する」こうすると、単なる売上目標が「自分の成長」とつながります。半年後には、「売上1億円を達成した」だけではなく、
「以前は顧客から言われたことに対応していたが、今は顧客自身が気づいていない課題まで質問できるようになった」という成長を確認できます。
2.管理職なら「自分が行う」から一歩進める
管理職を目指しているBさんを考えてみましょう。Bさんは仕事ができる人です。部下から相談されると、すぐに答えを出します。「それなら、こうすればいいよ」「この場合は、こう対応して」本人としては部下を助けているつもりです。ところが、半年たっても部下が自分で判断できるようになりません。そこで下期のテーマを、「自分が答えを出すマネージャーから、部下が自分で答えを出せるようにするマネージャーへ」と設定します。
そして行動を、
・部下から相談されたら、まず「あなたはどう考えている?」と聞く
・月1回、部下に一つ仕事を任せる
・失敗したときも、すぐに結論を出さず原因を一緒に考える
とします。すると、進捗も確認できます。
9月「相談されると、ほとんど自分が答えていた」
10月「まず本人の考えを聞くことを意識した」
11月「部下から自分なりの案が出てくるようになった」
12月「一部の仕事を任せても、自分で判断して進められるようになった」
この状態なら、「マネジメント力を高める」という曖昧な目標が、具体的な成長として見えるようになります。
3.「コミュニケーション力を高める」を、確認できる行動に変える
Cさんは、「下期はコミュニケーション力を高めたい」と考えています。
悪い目標ではありません。しかし、半年後に、「コミュニケーション力が20%上がりました」とはなかなか言えません。そこで、具体的な行動数に変えてみます。識学では、誰が見ても達成・未達成を判断できる形で目標を設定することを重視します。
例えば、「会議で自分が話す時間を減らし、相手の話を引き出す」というテーマにします。
そして、「会議では最低3回、相手に質問する」という行動にします。さらに月末に、「今月、相手の話を深掘りできた場面は何回あったか?」を振り返る。
すると、成長を数字だけではなく、具体的な出来事として確認できるようになります。
4.「資格を取る」の先を見据える
例えばDさんが、「下期に簿記2級を取得する」と目標設定したとします。
これは非常に明確な目標です。しかし、「資格を取得すること」と「仕事で成長すること」は別の場合があります。そこで、資格取得 → 実務で使うまでつなげます。
例えば、「決算書を見て、会社の課題を3つ説明できるようになる」という成長目標を設定する。
すると、
10月:財務諸表の構造を理解する
11月:実際の会社の決算書を見る
12月:売上・利益・キャッシュの関係を説明する
1月:経営課題を仮説として考える
2月:上司に説明してフィードバックをもらう
3月:自分の言葉で経営課題を説明する
※簿記2級の受験月も、この計画の中に組み込んでおきます。
という成長の道筋ができます。「資格を取った」から「仕事で使えるようになった」へ。
ここまで考えると、目標設定の意味が変わります。
5.毎月の進捗管理は「○%」だけでなく3つの質問
では、どうやって進捗を管理すればいいのでしょうか。
毎月30分でも構いません。次の3つを確認します。
(1)今月、何ができるようになったか?
例えば、「部下に仕事を任せることができた」
(2)まだできていないことは何か?
「任せた後に、細かく口を出してしまう」
(3)来月、一つだけ何を変えるか?
「任せた仕事について、途中で細かく指示せず、最後に振り返る」
これだけです。
重要なのは、毎月完璧に進んでいる必要はないということです。むしろ、「思ったように進んでいない」と気づけること自体に、自分の不足を知るという大きな価値があります。
6.「このまま3カ月続けたら?」と考える
特におすすめしたいのが、この質問です。
「今の仕事の仕方を、このまま3カ月続けたら、なりたい自分に近づいているだろうか?」例えば、「管理職になりたい」と思っているのに、すべての仕事を自分で抱えている。このままでは、仕事ができるプレイヤーにはなれても、マネージャーとしての成長にはつながらないかもしれません。
あるいは、「顧客への提案力を高めたい」と思っているのに、毎回、顧客から言われたことだけを処理している。それでは、なかなか提案力は変わりません。
だからこそ、毎月一度、「今の行動は、目指している自分につながっているか?」を自分自身に問いかけます。上司との面談で一緒に確認してもらうのも有効です。
7.成長とは「できることを増やす」だけではない
もう一つ大切なのが、成長を「何かを足すこと」だけで考えないことです。
例えば管理職になった人が、「自分で仕事をした方が早い」という理由で、部下の仕事まで抱えてしまう。これは短期的には効率的かもしれません。
しかし、長期的には部下が育ちません。そこで、「自分がやる仕事を増やす」のではなく、「自分がやらなくても成果が出る仕事を増やす」という目標に変えてみる。これは大きな成長です。若い頃は、「自分ができることを増やす」ことが成長の中心だったかもしれません。しかし、役職や経験が増えるにつれて、「人ができるようにする」「仕事を任せられるようにする」「自分がいなくても回る仕組みをつくる」
ことも成長になります。
8.下期の目標は「成果・成長・行動」の3つで整理する
最後に、目標を増やしすぎないことです。おすすめは、
(1)成果
会社から期待されている結果
(2)成長
半年後にできるようになりたいこと
(3)行動
そのために毎月実践すること
この3つです。
例えば、成果「担当部門の売上を10%増加させる」成長「メンバーが自分で考えて動けるチームをつくる」行動「毎週1回、メンバーに答えを教える前に質問をする」
そして毎月、「今月、メンバーが自分で判断した場面は何だったか?」を記録する。
これだけでも、半年後にはかなり違った振り返りができます。
目標は「自分を縛るもの」ではなく、「自分の現在地を確認するもの」
10月に完璧な目標をつくる必要はありません。大切なのは、「半年後、どんな自分になっていたいか?」を一度考えること。そして、「そのために、今月何をするのか?」まで落とすことです。目標を立てたまま半年間走り続けるのではなく、毎月一度立ち止まる。
「できたこと」「できなかったこと」「次に試すこと」を確認する。そして、必要なら成長目標や行動目標を見直す。会社から期待されている成果目標については、上司と相談しながら進め方を調整する。そうすれば、下期の6カ月は単に「仕事をした6カ月」ではなく、「自分の仕事の仕方が変わった6カ月」になります。10月は、新しい目標を設定する月。同時に、「これからの半年で、自分は何を手放し、何を身につけるのか」を考える月でもあります。半年後に、「目標を達成しました」だけではなく、「この半年で、以前の自分にはできなかったことが、できるようになりました」と言える下期にしてみてはいかがでしょうか。
文/識学コンサルタント/岡根谷真介




DIME MAGAZINE













