「サンマルクカフェ」を運営するサンマルクホールディングスが、9月に「つるとんたん」を買収すると発表しました。カフェチェーンの和食·うどん業態の取得は相いれないようにも見えますが、サンマルクはすでに牛カツ業態を買収しており、インバウンドや海外展開に活路を見いだしていました。「つるとんたん」はさらに一歩踏み込んだものだと見ることができます。
牛カツ業態の取得でインバウンドによる成長戦略を鮮明に
「つるとんたん」は、うどん専門業態を国内で13店舗、海外フランチャイズ2店舗を展開しています。取り扱ううどんの種類が豊富で、会席などのコースメニューも用意しているのが特徴。うどんは大皿で提供され、1玉から3玉まで同じ値段で提供しています。
訪日外国人の人気が高いことで知られており、インバウンドメディア「訪日ラボ」による「【2026年最新版】外国人に人気の飲食店ランキング[羽田空港編]」で6位を獲得しています。
大阪府が2019年8~11月の日本語以外のSNS投稿を分析した調査では、「つるとんたん」のロゴ·オブジェクトが「一蘭」、「かに道楽」などとともに撮影対象になっていたことが明らかになりました。
サンマルクは「つるとんたん」の買収で、「今後継続的な拡大が見込まれるインバウンド需要及び海外展開の本格化を見据えた場合、和の専門業態をさらに強化していくことが当社グループの成長に不可欠である」との考えを示しています。
サンマルクは2024年に牛カツ専門店の「もと村」と「京都勝牛」を買収しました。牛カツはインスタグラムで「#gyukatsu」の投稿が溢れるほど、訪日外国人に人気の業態。会社の成長戦略において、インバウンド需要獲得とそれに付随する海外展開という方向性が明確になったのです。
「サンマルクカフェ」「鎌倉パスタ」と牛カツの3つが成長の柱に
サンマルクの収益構造は変化しています。
もともと牛カツ業態を買収する前からレストラン事業の売上構成比率が高い会社でした。レストラン事業の主力業態は「鎌倉パスタ」。2024年3月期のレストラン事業の売上構成比率はおよそ6割で、喫茶事業が4割でした。
牛カツ業態の買収により、2026年3月期は牛カツが2割、およそ5割が「鎌倉パスタ」を主軸とするそれ以外のレストラン、3割が喫茶という比率です。
買収した京都勝牛は、サムギョプサル専門店「ベジテジや」など牛カツ以外の業態も展開していました。サンマルクは周辺業態を譲渡し、牛カツ業態に経営資源を集中する体制を整えました。
サンマルクはコロナ禍で「サンマルクカフェ」の不採算店の閉鎖を進め、運営効率の底上げを図りました。生産性改善が進んだことを背景に、2026年3月期から出店を再開。290店舗から、2029年3月期に370店舗まで拡大する計画を立てています。
「鎌倉パスタ」の客数と客単価は堅調、継続的な出店で成長への寄与度を高めようとしています。
サンマルクは中期経営計画において、2029年3月期に売上高800億円という目標を掲げていましたが、これを1000億円に上方修正しました。その差を埋めるのがM&Aでした。さらに2026年3月期下期以降に戦略を見直し、「M&Aによる新ブランドの獲得」という方針から「国内外における牛カツ業態の成長加速」へと改めています。
牛カツ業態の拡大を戦略の柱の一つに位置づけたのです。
中国の渡航制限の影響も見え始める中での買収劇
しかし、足元では牛カツ業態がやや苦戦を強いられているように見えます。2026年3月から6月までは、牛カツ業態を主軸とするM&A業態の既存店売上が前年同月を下回ったのです。7月は2.2%上回ったものの、8月は2.9%下回りました。
サンマルクは減少の要因の一つに「春節以降のアジア地域における渡航動向の変化」を挙げています。
2026年の春節における中国からの訪日客数は、中国政府の渡航自粛の影響などにより、前年比で半減したと報じられました。
「つるとんたん」はニューヨークやボストン、ハワイなどアメリカに出店をしているブランド。「京都勝牛」はアジア圏への展開を中心としていました。
「つるとんたん」の買収は、インバウンド需要の獲得や海外展開を見据えた動きの中でも、ポートフォリオを分散させる動きであるようにも見えます。
国内においては、来年4月から2年限定で飲食料品の消費税率が8%から1%に引き下げられる見込みです。これにより、飲食店の利用が控えられるのではないかとの懸念が出ています。日本フードサービス協会は10月9日に会員企業へのアンケート結果を発表し、6割が減税直後に客数が減るとの見通しを示しました。
インバウンド需要の獲得は、成長機会を得るのと同時に、リスクヘッジにもなります。サンマルクは外食における新たな道を示していると言えるでしょう。
文/不破聡




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