小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

客が涙を浮かべる体験とは?伊豆の旅館「浜の湯」が貫く完全担当制・顧客カルテの秘策

2026.10.12

人手不足や高齢化を背景に、宿泊業界においてもAIをはじめとした効率化が進んでいる。

しかし、あまりに効率化に集中しすぎると、置き去りになりがちなのが、心の通ったおもてなしだ。

そんな中、客が涙するほど感動する温泉旅館がまだ日本に存在する。単なる‶古いタイプ〟の旅館ではない。20代後半で支配人に抜擢した若手が活躍する「食べるお宿 浜の湯(以下、浜の湯)」だ。

今回は、客が涙したエピソードのひとつとその背景について、若手支配人に聞いた。

「仲居の完全担当制」を採用

「浜の湯」は、静岡県・伊豆稲取温泉の最先端に位置する、全客室海向きの絶景温泉旅館だ。

その名の通り、食にこだわりがある。稲取漁港の入札権を持ち、金目鯛・伊勢海老・鮑(あわび)を含む料理を、贅沢に部屋食で提供する。

最も特徴的なのが、仲居の完全担当制を採用している点だ。

出迎えから食事の部屋出し、布団敷き、チェックアウト・見送りまで、一人のスタッフが専任で担当。客の利用背景や好みを把握し、パーソナライズされた丁寧な接客を提供している。

接客に感動!客が涙したエピソード

浜の湯では、客が感動で涙を浮かべるエピソードが絶えないという。支配人の大門氏に話を聞いた。

大門一朗氏/「食べるお宿 浜の湯」支配人
1996年1月生まれ、茨城県出身。神奈川大学理学部情報化学科卒。大学ではプログラミングを専攻するも、合同会社説明会で浜の湯と出会い、その魅力に惹かれ直感で入社を決意。現在、支配人を務める。
https://www.izu-hamanoyu.co.jp/

「河津桜が咲く季節に、とある気さくなご夫婦がご来館してくださいました。特別な事前情報はなかったため、いつも通りの接遇でご滞在をお楽しみいただけるよう努めました。

夕食の際は会話も交えながらご堪能いただき、私の目には大変ご満足いただけたように映りました。

そうして迎えた翌朝のことです。朝一番のお茶をお部屋へお持ちしたときに、座卓の上に置かれている、昨晩はなかった若い男性のお写真が目に留まったのです。

昨晩に築けた関係であれば、一歩踏み込んでもよいのではないかと想い、そのお写真について奥様に伺いました。

奥様によると、お写真に写っている男性は昨年亡くなられた息子様とのこと。『実は今回の旅行は、以前、息子と一緒に見た思い出の河津桜を改めて見に来たんです』と悲し気にお話しくださいました。

朝食の支度のため、一度下がった私は、ご夫婦のためにできることを考えました。そこで、息子様のお席とともに、一緒に食事ができるよう、息子様が生前に好きだったというコーラを添えて、影膳の用意をしました。

その光景を見たご夫婦は、涙を浮かべながら喜んでくださいました。そのときの表情は、今でもはっきりと覚えています」

感動が生み出される背景

なぜ、このような感動が生み出されるのか。大門氏に改めて尋ねてみた。

「浜の湯では『完全担当制』『部屋食』といった昔ながらの旅館のおもてなしを大切にしています。長い時間を一緒に過ごすからこそ、会話の内容だけでなく、表情や声の変化など、ちょっとした変化にも気づくことができます。

従業員とお客様の関係を越え、第二の家族や旧知の仲のような関係性を築けるからこそ、何気ない一言や些細な心遣いでも大きな感動につながるのだと考えております」

リピート利用の鍵となる「顧客カルテ」

もうひとつ、感動接客を生み出せる秘密がある。「顧客カルテ」の存在だ。これがリピートを生む理由でもあるようだ。

「浜の湯では、お客様に『また来たい』と思っていただけることを大切にしています。そのために活用しているのが『顧客カルテ』です。

前回のお食事や会話、お子様のお名前、お好みなどを記録し、次回のご来館時には前回のご滞在を踏まえた接客ができるようにしています。

単に同じサービスを繰り返すのではなく、前回よりも少しでも喜んでいただくには何ができるかを考える。

その積み重ねが、お客様の満足度を高め、浜の湯そのものだけでなく、またこの人に会いたいと思っていただける関係につながるのだと考えております」

AIもかなわない?時代に逆行する「手間暇」かけたおもてなし

今や時代はAI活用が進み、宿泊業界でも浸透しつつある。そのような中、仲居の完全担当制や部屋食、顧客カルテと、あえて時代に逆行するようにも思える施策を重ねている。その思いとは?

「私たちの仕事で生み出せるものは、形として残るものではありません。『楽しかった』『美味しかった』『また来たい』といった、お客様の心に残る感情こそが、私たちが提供できる価値だと考えています。

その感情を最大限に生み出すためには、『満足』の先にある『感動』が必要です。そして、人の心を動かす感動は『非効率』とされ、削減されてきた人と人との関わりの中から生まれるものだと思っています。

私自身、AIを活用しながら業務のDX化も進めていますが、大切なのは何のために効率化するのかという目的です。人件費の削減のためではなく、感動を生む『非効率』な時間を作り出す。その時間をお客様と向き合い、人にしかできないおもてなしに費やす。

旅館が旅館であるためには人同士の関わりが生む感動が必要不可欠です。人手不足が叫ばれる今だからこそ、どのように『非効率』を生み出すか。その考え方を大切にしています」

AI時代だからこそ、ぜひ一度はその接客を体験してみたいものだ。

取材・文/石原亜香利

CG業界ではAIをどう活用する?日本を代表する制作会社にゲーム開発におけるAIの活用事例を聞く

生成AIの普及により、「簡単に動画が作れるようになった」と評判だ。しかし、それは素人界隈の話であるようだ。 では、プロのCG業界ではどのようにAIを活用している…

Web業界からライターに転身し独立。メディアのコラム記事執筆や、Webの知識を活かしたSEOライティングを通じ、IT、ビジネスからライフスタイル、グルメまでわかりやすく面白く役立つ情報を読者視点で伝えることを心がけている。

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2026年9月16日(木) 発売

今月のDIMEは9月18日(金)公開の新作でも話題沸騰中『踊る大捜査線』の大特集!織田裕二さんへのロングインタビューをはじめ、名作の魅力を徹底深掘り!更に10年ぶりの新作で盛り上がる『機動警察パトレイバー』特集も!そして昨今ふえる災害への対応マニュアルを『ゴルゴ13』と学べる特集も入った実用とエンタメ二刀流の一冊!

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。