沖縄県のテーマパーク「ジャングリア沖縄」の運営会社ジャパンエンターテイメントホールディングスが2026年6月期に173億円の赤字を計上しました。150万人を見込んでいた来場者数は初年度100万人で、計画を大幅に下回りました。
沖縄のテーマパークは、かつてユニバーサル·スタジオ·ジャパン(USJ)が計画を立ち上げ、撤退した経緯があります。採算がとれないとの判断でした。
「美ら海水族館」近くに建設する計画だったUSJの沖縄リゾート
ジャングリアは政府系金融機関の沖縄振興開発金融公庫が新たに30億円を融資し、スポンサー探しも始まったと言われています。1日あたり2400人の来場が損益分岐点と目安とされていますが、夏休み期間でも1500~2000人と下回っていたことが金融機関向けの報告資料で明らかになりました。
刀の森岡毅CEOはジャングリアの成功確率を73%と予想していましたが、初年度の数字は決して成功と言えるものではありませんでした。
USJによる、沖縄の大規模なテーマパーク構想が明らかになったのは2014年。2015年7月に当時のCEOだったグレン·ガンペル氏と、執行役員でマーケティング本部長だった森岡毅氏が沖縄県知事と会談。沖縄進出を正式に打診することが明らかになりました。
計画当初は海洋博公園周辺の国有地を活用する案が採用されていました。「美ら海水族館」に近い場所で計画されており、投資額は600億円。沖縄のテーマパークは映画と切り離し、「ユニバーサル」のブランドは使わない方針でした。森や海の自然を活かした体験型のリゾート、テーマパークが予定されていたのです。
しかし、2015年9月に潮目が大きく変わります。USJがアメリカの大手ケーブルテレビ会社コムキャストに買収されたのです。取得額は1830億円で、テーマパーク事業の強化を狙ったものでした。同年11月にトップが交代します。新たに就任したのがジャン·ルイ·ボニエ氏。テーマパーク事業部の最高財務責任者を務めた、プロフェッショナルでした。
ジャン·ルイ·ボニエ氏は採算面で沖縄進出に難色を示し、経営資源を大阪に集中する方針を打ち出しました。
カジノ事業に手を広げようとしたUSJ
実はUSJの沖縄進出には重要な要素がありました。カジノです。
USJは大阪のカジノプロジェクトを目論んでいたものの、当時の大阪市長だった橋下徹氏は参入に否定的な態度を示しました。当時、大阪市はUSJに貸している市有地の賃料引き上げを求めて訴訟を起こすなど、関係は良好ではなかったのです。
白羽の矢が立ったのが沖縄でした。
沖縄進出に前向きだったグレン·ガンペル氏は、アメリカの経済メディア·ブルームバーグに対して、テーマパークと統合型リゾート建設の両方の可能性を検討していると語りました。
しかし、プロジェクトの構想を固めていた2014年11月にカジノ法案は廃案になりました。結果的に2016年12月に成立するのですが、当時自民党と連立を組んでいた公明党がカジノに難色を示していたのです。USJが沖縄プロジェクトを白紙撤回した2015年は特に風向きが悪いタイミングでした。
USJが沖縄進出を決めた要因の一つに、那覇空港第2滑走路の建設決定がありました。つまり、アジアからの観光客を取り込む方針を明確に固めていたのです。集客の柱の一つとして、カジノを織り込んでいた可能性は大いにあります。
USJの出店候補地である海洋博公園周辺は、那覇空港から車で1時間40分から2時間程度かかります。距離はジャングリアとほぼ同じです。
ジャングリアはアクセスが悪いなどと言われることがありますが、カジノというキラーコンテンツがあれば多くの人を引き付けることが可能。大阪で長年開発が進まなかった「夢洲」でカジノ誘致が成功したことが、それを物語っています。
コムキャストに買収されたUSJは、カジノ法案が宙づりになっていることに加え、テーマパーク単体では採算がとれないことを鑑みて、白紙撤回した可能性が高いのではないでしょうか。
そうであれば、沖縄の海が近く、「美ら海水族館」に隣接するリゾート型のテーマパークでさえ、カジノがなければ収益性に問題があると予見していたことになります。
キラーコンテンツ不在の施設に700億円規模の資金を呼び込んだ華麗な手腕
ジャングリアは、「美ら海水族館」からも距離があり、海ではなく沖縄のジャングルをテーマとする施設。USJの計画からは相当な開きがあります。
ジャングリアは、テーマパーク単体としての誘引力を持たせなければなりません。開業前から、森岡氏が積極的にマスメディアなどでPRしていた理由がわかります。
森岡氏を批判する声も多いですが、カジノも水族館も海もない、有力なIPも大規模なテーマパークの運営経験もないという状況のなかで、700億円規模の資金調達を実現したことは紛れもない事実。森岡氏のプレゼン力や周囲を巻き込む力が強力なものであることを物語っています。正にゼロをイチにする実力者だと言えるでしょう。
しかし、集客に問題があることが露見した今、ジャングリアに求められているのは中長期目線で安定運営を実現し、利益を出して借り入れた資金を返済する堅実性です。
規模を縮小するのか、インバウンド集客に力を入れるのか、地元民向けの需要を育てるのか。新たな方向性はまだ示されていません。この規模の施設の立て直しにも、相当な力がかかるのは間違いないでしょう。
文/不破聡




DIME MAGAZINE













