近年、最低賃金の引き上げや人手不足を背景に、パート・アルバイトの採用・定着をめぐる環境は一段と厳しさを増している。
福利厚生の食事補助サービス「チケットレストラン」を展開するエデンレッドジャパンはこのほど、パートタイマーを雇用する企業担当者300名と、現在パートタイマーとして働く300名の計600名を対象に、「パートタイマーの待遇に関する実態調査」を実施し、その結果を発表した。
時給を引き上げた企業の8割超が、“時給だけ”の採用競争に限界
パート・アルバイトを取り巻く賃金環境は、大きく変化している。最低賃金(全国加重平均)は、2021年度の930円から、2026年度は1,177円への引き上げが答申され、5年間で247円、約27%上昇するなど、企業にとって人件費負担が一段と高まっている。
実際に本調査でも、この1年間でパートタイマーの時給を「引き上げた」企業は78.7%となり、最低賃金の引き上げや人手不足が続く中、パートタイマーの採用・定着を図るうえで、時給の引き上げは企業にとって重要な対応策の一つとなっていることがわかる。
しかしその一方で、実際に時給を引き上げた企業236社にパート採用について尋ねたところ、82.6%が「時給の引き上げだけで採用・定着に対応していくことに限界を感じる」、84.4%が「時給を引き上げるだけでは、他社との差別化が難しくなっている」と回答。時給の引き上げが広がる中、「時給だけ」で人材を獲得・定着させ、他社との差をつくることが難しくなっている企業側の課題が浮かび上がった。
時給上昇だけでは“生活のゆとり”を実感できず。時給が上がったパートタイマーの82.0%が「生活にゆとりを感じない」
では、働くパートタイマー側は、時給の上昇をどのように受け止めているのだろうか。
パートタイマー300名に、この1年間の時給の変化を尋ねたところ、59.3%が「上がった」と回答した。
しかし、時給が上がった178名に「時給が上がったことで、以前より生活にゆとりが生まれたと感じるか」を尋ねたところ、「感じない」との回答は82.0%にのぼり、時給上昇を経験していても、生活のゆとりにつながったと実感している人は2割弱にとどまる。
賃金以外にも残る“待遇格差”。パートタイマーの70%が正社員との「待遇差」、65.3%が「福利厚生格差」を実感
さらに、時給以外の待遇に目を向けると、70.0%が正社員との「待遇差」を感じており、65.3%が正社員との「福利厚生格差」を感じていることが判明。時給の引き上げが進む一方で、働く側では生活のゆとりを実感できていない人も多く、賃金以外の待遇にも差を感じているなど、パートタイマーの待遇を「時給」だけでは捉えきれない実態が浮き彫りとなった。
「正社員にはある、パートタイマーにはない」福利厚生の実態。格差TOP3は、「住宅補助」「家族手当」「スキルアップ支援」
続いて、パートタイマーの65.3%が実感している「福利厚生格差」について、企業側の制度適用状況を見ると、雇用形態による違いがより具体的に浮かび上がった。
企業担当者300名に、正社員とパートタイマーへの福利厚生制度の適用状況を尋ねたところ、各制度について「正社員のみ制度がある」と回答した割合は、「住宅関連補助」(56.3%)が最も高く、「家族・扶養手当」が54.0%、「スキルアップ支援」が48.3%と続いた。
注目されるのは、上位に挙がった制度が、単なる職場内の利便性にとどまらず、住居や家族といった日々の生活基盤を支える制度や、将来のキャリア形成につながる制度である点だ。人手不足が続く中、パートタイマーは企業の事業運営を支える重要な人材となっている。
今回の結果は、パートタイマーの待遇を時給だけで捉えるのではなく、一人ひとりの生活や、その先のキャリアまで見据えて、どのような支援を提供していくのかを考える必要性を示唆している。
パートタイマーの88.7%が、同じ仕事・同じ時給なら「福利厚生が充実した勤務先」を選択
では、こうした福利厚生の違いは、パートタイマーの勤務先選びにどの程度影響するのだろうか。仕事内容や時給が同程度の求人が複数あった場合、88.7%が「福利厚生が充実した勤務先を選びたい」と回答した。
時給を引き上げた企業の84.4%が「時給を引き上げるだけでは他社との差別化が難しい」と感じる一方、働く側の約9割は、仕事内容や時給が同程度であれば、福利厚生の充実度を勤務先選びの判断材料としていることがわかった。
時給が重要な待遇であることに変わりはないが、時給や仕事内容が同程度になった際には、「福利厚生」が企業を選ぶ際の差別化要素の一つになり得ることがうかがえる。
時給上昇層でも、「福利厚生満足度」の違いで会社の評価に大きな差!
さらに、福利厚生は勤務先を選ぶ際の判断材料になるだけでなく、働き始めた後の会社に対する意識とも関係していることがわかった。
ここ1年で時給が上がったパートタイマー178名を福利厚生満足層(n=86)と不満足層(n=92)に分けて、勤務先への意識を比較した。すると、「現在の勤務先は従業員を大切にしていると思う」は、満足層65.1%に対して不満足層29.3%で35.8ポイント差となった。
「現在の勤務先に満足している」は88.4%対64.1%で24.3ポイント差、「意欲を持って働けている」は72.1%対48.9%で23.2ポイント差、「長く働き続けたい」は82.6%対66.3%で16.3ポイント差となり、すべての項目で高い結果となった。同じ「時給上昇層」の中でも、福利厚生満足層の方が、会社へのエンゲージメントに関わる複数の指標が一貫して高い傾向がみられる。
これらの結果から、福利厚生は「採用時に選ばれるための条件」にとどまらず、時給上昇後の勤務先満足や働く意欲、継続意向とも関連していることがうかがえる。時給と福利厚生を二者択一で考えるのではなく、両者を含む待遇全体を設計することが、採用・定着の観点でも重要となることが示唆された。
<調査概要>
調査名 : パートタイマーの待遇に関する実態調査
調査主体: 株式会社エデンレッドジャパン
調査方法: WEBアンケート方式
調査期間: 2026年9月4日~2026年9月7日
調査対象:パートタイマーを雇用する人事担当者300名/パートタイマー300名
出典元:エデンレッドジャパン
構成/こじへい




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